【研究の目的】本研究は、八王子の実践家である橋本義夫が1960年代後半に創始した庶民による文章執筆運動、「ふだん記」(ふだんぎ)の運動を全国各地で実践する、「ふだん記」各地グループの活動を追い、市井に暮らす普通の人々から生まれた草の根の地域文化の成立・発展過程を明らかにすることが目的である。 【具体的内容】(1)文友(「ふだん記」の執筆者)へのインタビュー調査、(2)各地グループの訪問調査、(3)各地グループの機関誌や橋本義夫や文友執筆の書籍の文献調査の三つの内容を中心に研究を実施した。各地グループの中でも、6グループ(旭川、札幌、江別、北見、帯広、留萌)が活動をしている北海道や、仙台のみちのくグループの調査研究を行った。最終年度では文友たちの対面交流の場に着目し、北海道において各グループ持ち回りで開催している、ふだん記北海道交流会(留萌大会)の調査や「ふだん記」関連の資料の文献調査、雲の碑グループの集いなどの調査を行った。北海道交流会は北海道の各地グループの文友が一堂に集まり「ふだん記」に関する講演を聴き、語り、懇親を深める場である。さらに最終年度では報告書執筆に従事した。報告書は川原健太郎『戦後地方文化運動の実証的研究―「ふだん記」各地グループを対象として―』(揺籃社、2019年)として発行した。 【意義】本研究の意義は「ふだん記」初期を中心に研究されてきたため一定の研究の蓄積がありつつも、これまであまり研究されなかった各地グループの歴史と実態を明らかにしたことにある。各地グループから戦後特に1970年代後半以降に展開された草の根の地方文化活動の一側面を解き明かしている。 【重要性】本研究では多くの各地グループの協力を得つつ、草の根の記録を紡いできた多くの人々の声や、手書きのものも含め機関誌を蒐集してきており、草の根の人々の戦後史の貴重な記録を集め、研究した点に重要性がある。
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