研究課題/領域番号 |
16K04573
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
前田 耕司 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60219269)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 先住民族 / アボリジニ / 主体形成 / 専門職養成 / 能力開発 / 高等教育 / 教員養成 / アイヌ民族 |
研究実績の概要 |
本研究の課題は、オーストラリアの先住民族コミュ二ティの発展に資するアボリジニの専門職養成の特質と課題について明らかにすることである。代表者はこうした専門職養成プログラムの指導者や履修者を対象に質的調査を行い、先住民族の主体形成メカニズムを解明する研究を進めている。 研究代表者は昨年8月に渡豪し、モナシュ大学教育学部のアボリジニ理解の授業で参与観察を行い、オーストラリアの教員養成システムにおいて先住民族が主体となる教授・学習の組織化がどのように図られているのかを調査した。また、8月24日に海外研究協力者のMaRhea,Z.准教授やAnderson,P.上級講師、Bao,D.上級講師および先住民族関係の専門的な研究者を含めた先住民族教育に関するパネルディスカッションをモナシュ大学教育学部および先住民族諮問委員会共催で開催し、本研究の成果の一部を国際共同編集書籍(Post-Imperial Perspectives on Indigenous Education: Emerging Lessons from Australia and Japan)として公刊する出版企画について協議を行った。代表者は編者としてアボリジニの能力開発システムをモデルにアイヌの専門職養成システム構築の可能性について課題の提起を行った。そして3月末日にBook Proposalを出版社の Routledgeに提出した。 9月には日本学習社会学会研究大会における課題研究の提案者に編者の一人であるBao上級講師を招聘し、アボリジニへのサイレント・メソッドの教授法の報告から知見を得た。 代表者は、本研究に関する中間報告を「マイノリティ教育と学習社会研究の再構築―教育・研究方法の脱植民地化と先住民族の主体形成」(日本学習社会学会編『学習社会への展望―地域社会における学習支援の再構築』明石書店)の論稿で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の成果の一部は、最終的に国際共同編集書籍( Maeda, K., Ma Rhea, Z., Anderson, P. and Bao, D. (eds.) Post-Imperial Perspectives on Indigenous Education: Lessons from Japan and Australia, New York and London: Routledge.)として公刊する方向で確認したが、これについては、スカイプ会議を通して編集企画についての確認および意見交換を行うなど、編者全員と各章の執筆者による拡大編集会議をメルボルンで開催し、検討を重ねてきた。しかし、当初は、他の出版社からの上梓を計画していたが、出版社より内容構成について再考が求められた。編者で十分な討議を重ねた結果、出版社の変更で落ち着いたという経緯がある。したがって、代表者の担当章である第6章(Debatable Issue in Professional Development and Job Training for Ainu Community)と結論の執筆・入稿について遅れが生じている。 しかしながら、本研究に関する中間報告的な成果として「マイノリティ教育と学習社会研究の再構築―教育・研究方法の脱植民地化と先住民族の主体形成」(日本学習社会学会編『学習社会への展望―地域社会における学習支援の再構築』明石書店、pp.34-48)の論稿を発表した。 また、本研究の関連領域として「先住・少数民族の言語・文化の消滅と維持・復興」というテーマでShinsho,No.83,2017 Springに掲載予定の原稿を執筆、入稿した。
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今後の研究の推進方策 |
海外研究協力者のモナシュ大学のMaRhea,Z.准教授およびニューサウスウェールズ大学のAnderson,P.上級講師を招聘する。具体的な招聘計画としては、(1) 2017年9月2~3日に開催される日本国際教育学会第28回大会の課題研究で中間報告的な意味での研究成果の共同発表を行う。そこでの研究討議を振り返りながら、(2) 国際共同編集書籍( Post-Imperial Perspectives on Indigenous Education: Lessons from Japan and Australia)の編集業務の進捗状況の確認および本年度の研究実施計画の確認のための編集会議を9月4日以降に複数回にわたって実施する。それを踏まえ、(3) 9月9日~10日に開催の日本学習社会学会第14回大会課題研究で成果発表を行う。 11月の計画としては、オセアニア比較国際教育学会(Oceania Comparative and International Education Society)の第45回大会( Noumea, New Caledonia)においてDr. MaRheaおよびDr.Andersonと共同セッションを企画し、本研究の内容を発表し、国際的な発信に努める。 当該研究の成果については、昨年8月に取得したAustralia-Japan Foundation (AJF)のPublication Award(出版助成)2016-17により、本年度末に『オーストラリア先住民族コミュ二ティの担い手養成に関する研究(仮)』(明石書店)という題目で執筆・入稿予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際共同編集書籍については、すでに一部の原稿が執筆に着手しており、本書籍の出版を控え、編集の最終的な打ち合わせを残す段階に至っている。対面での編集会議は欠かせず、編集業務の進捗状況の確認と出版に向けた最終会議を行うために海外研究協力者の招聘計画を立てる必要がある。 もう1つの理由として、海外研究協力者の要望により、2017年11月に開催されるオセアニア比較国際教育学会(Oceania Comparative and International Education Society)の第45回大会(Noumea, New Caledonia)においてDr. MaRhea Z.、およびDr. Anderson,P.と共同セッションを企画し、本共同研究の内容を発表し、国際的な発信に努めることが不可欠である。そのための渡航費用等が必要となる。
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次年度使用額の使用計画 |
1つには、MaRhea Z.および Anderson P.の招聘費用として使用する。具体的には(1) 2017年9月2~3日に開催される日本国際教育学会第28回大会の課題研究で本共同研究の成果を発表する。そこでの研究討議を振り返りながら、(2) 編集業務の進捗状況の確認のための編集会議および11月開催のオセアニア比較国際教育学会における研究発表のための打ち合わせを9月4日以降に複数回にわたって実施する。それを踏まえ、(3) 9月9日~10日に開催の日本学習社会学会第14回大会の課題研究で成果発表を行う。 二つには、2017年11月7~10日に開催されるオセアニア比較国際教育学会の第45回大会において MaRhea ,Z.、およびAnderson P,と共同セッションを企画し、国際的な発信に努めるための渡航費用として使用する。
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