研究課題/領域番号 |
16K04574
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研究機関 | 岐阜女子大学 |
研究代表者 |
安井 智恵 岐阜女子大学, 家政学部, 准教授 (40440557)
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研究分担者 |
宮前 耕史 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (30584156)
平岡 俊一 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (70567990)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地域とともにある学校づくり / 地域人材育成 / コミュニティ・スクール / 地域創造型学校 / 学校・家庭・地域の連携・協働 / スクール・ヒストリー / 地方創生 / キャリア教育 |
研究実績の概要 |
「地域とともにある学校づくり」を実質化し、地方創生の時代に学校が「地域人材育成」という新たな役割を果たしていくためには、従来の学校観からのおよそ180度とも言っても過言ではない学校観の脱却と転換が必要であり、従来型の学校・地域連携や、学校支援・地域活用型のコミュニティ・スクールを早急に拡大するだけではその形骸化が懸念される。そこで本研究では「地域とともにある学校づくり」が進展する段階を、①学校支援・地域活用型、②学校支援・地域参加型、③地域創造型の3つに類型化し、上記のような学校・地域の連携・協働に基づき地域人材形成に取り組む学校を「地域創造型学校」と規定した。その上で「地域創造型学校」の学校・地域の連携・協働の仕組みの構築過程をスクール・ヒストリーとして分析し、どのような過程を経て「地域創造型学校」に発展・転換していったのか、その変容過程を明らかにし、地域とともにある学校づくりの実質化への示唆を得ることを目的とする。 研究1年目となる本年度においては、コミュニティ・スクールを核とした「地域とともにある学校づくり」の先進的事例を中心に調査研究を行った。「地域創造型学校」における課題意識・危機意識の共有過程と、学校・家庭・地域の連携・協働の仕組みの構築過程を、学校内外の視点から調査し、どのように「地域創造型学校」へと発展・転換を遂げたのか、その成立過程を明らかにした。さらに、コミュニティ・スクールはその多くが小・中学校である一方、地域人材育成のためには高等学校での取り組みが不可欠であることから、地域の持続可能性に困難を抱える高等学校の先進的な事例についても取り上げ、地域課題解決型キャリア教育の取り組みの現地調査を行った。 またこの過程を通じ、2年目に計画している全校をコミュニティ・スクールに指定している自治体の教育委員会と学校を対象とした質問紙調査に関する予備的検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1年目の本年度は、現地調査も兼ねた研究打合せを5月、8月、10月に実施し、研究の目的や方向性、研究成果報告等について共同研究のメンバーで共有することができた。 「地域創造型学校」には、学校統廃合の危機から統合する2校区が連携し新たな地域創造を果たす【統廃合型】、へき地で「教育困難校」と言われ廃校の危機にあった学校が何らかの契機により奮起し「地域創造型学校」へと飛躍する【困難校型】、都市部の希薄化した地域の絆を学校を核に再構築していく【都市再構築型】、地方の進学校が進路指導の観点から生徒のキャリア開発の一環として地域創造に取り組む【進学校型】があると分類し、以下のような先進的事例を取り上げ、関係者へのインタビュー調査、関連資料の収集等集約的な現地調査を行った。 【統廃合型】の事例:①岐阜市立岐阜小学校、【困難校型】の事例:②島根県立隠岐島前高等学校、③北海道浦幌町の浦幌学園、④岩手県立遠野高等学校、⑤愛媛県内子町、【進学校型】の事例:⑥岐阜県立可児高等学校。 とりわけ①では、コミュニティ・スクール先進校で教員・保護者・地域住民・学生が参加するワークショップを企画実施し、KJ法を用いて熟議を行い現状と課題を明らかにできた。また③では、全町をあげた地域人材形成の推進方策としてコミュニティ・スクールを導入した経緯が明らかになった。⑤では、地域づくり活動で知られる内子町を現地調査し地域づくり教育の実状を把握した。⑥では、高等学校で地域課題解決型キャリア教育を行っている取組みを参観し、地域に戻る人材を育成する可能性が示唆された。 本年度は4カ所の現地調査を計画していたが、情報収集に努めた結果、2年目に予定していた③⑥の事例調査を前倒しで実施できた他、本研究により適合的な事例に関する情報を得られたことが収穫であった。一方、【都市再構築型】の事例調査と分析を次年度以降行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
先進的事例調査については、本年度は2年目に予定していたものも含めて比較的順調に進んでいるため、2年目以降は、地域とともにある学校づくりに関する質問紙調査を重点的に行い、先進的事例については追加調査を行う。先進的事例調査及び質問紙調査の結果を基に、「地域創造型学校」における学校と家庭・地域の連携・協働の仕組みの構築過程を分析し、どのような過程を経て「地域創造型学校」に発展・転換していったのかの変容過程を明らかにする。そこから、地域とともにある学校づくりの実質化について考察し、コミュニティ・スクールの早急な必置化についても批判的に検討する。 (1)質問紙調査:本年度の「地域創造型学校」の先進的事例調査の結果を参考に、2年目には、全公立小・中学校をコミュニティ・スクールに指定している自治体をいくつか取り上げ、教育委員会及び学校に対して「地域とともにある学校づくりに関する質問紙調査」を実施する。自治体選定にあたっては、比較的早い時期から指定した自治体と近年指定した自治体を対象とし、調査結果を比較・分析し、その特質を明らかにする。 (2)先進的事例調査:2年目以降は、【都市再構築型】の事例として、①東京都三鷹市、②京都府京都市等を取り上げ、現地調査を行い、都市部の学校において、学校を核として希薄化した地域の絆を再構築する過程を明らかにする。また、地域の実態や学校の状況により「地域創造型学校」の様相も多様であることが予想されるため、質問紙調査の結果をもとに、他の類型の先進的な事例についても適宜追加調査を実施したい。 (3)研究成果の発表:研究成果の一部については、今後書籍としてまとめ出版予定である。また、本研究の最終年度には研究成果を総括し、報告書を作成し研究成果発表会を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
地域とともにある学校づくりの先進的事例に関する調査研究を行う中で、本年度研究情報収集が順調に進み、2年目に予定していた事例校2校について1年目に前倒しで実施することが出来た。これに伴い、1年目に予定していた先進事例調査のうち、【都市再構築型】の現地調査を2年目に変更したため、次年度にそのための旅費及び物品費が必要となり次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
先進事例の現地調査の旅費及び物品費として次年度使用額を加え、【都市再構築型】の現地調査を2年目に実施する。また、当初予定していた研究打合せ・研究会(2回)、現地追加調査のため、旅費を使用する。 その他、当初から2年目に計画している質問紙調査のための郵便代、データ入力代、消耗品費を使用予定である。 さらに、本研究テーマは現在研究が進みつつある分野であり、学校と地域の連携・協働、地域とともにある学校づくり等に関連する文献も随時新しいものが刊行されつつあるため、引き続き最新の文献を収集し、物品費で購入する予定である。
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