英国における若者の教育から仕事への移行過程を検証する、パネル調査を行うことを目的にした予備的作業と調査計画の確定を目的とする本調査において、本年度は、①既存の英国のパネル調査(Understanding Society等)の再分析、詳細分析を行うことによって、未解明の課題、検証仮説の抽出を行った。②英、独、スイス、スエーデンの共同研究者とインターネットによるメールの交換や遠隔会議を開催し、それぞれの国の代表的な若者の移行調査の再分析を行い、各国の移行の移行の特徴、その規定要因を比較するとともに、今後の移行調査を行うための、方法論的な吟味を行った。 こうした国際比較研究を含めた研究により、①先進国の中でのイギリスの若者の移行の特徴の究明とその相対化をする作業を行い、英国は、国際的分類の4類型のうち、「Study While Working」タイプに分類され、②その規定要因として、労働市場、福祉体制、家族関係の状況の影響を確認した。さらに、③英国に焦点を当てる固有の意義として、多くの国で、早期離学者や初期キャリアにおいて不安定な仕事に就いた者が、キャリアの袋小路の罠に捕らえられるリスクが高いなかで、英国男性の場合、初期キャリアにおける不安定な仕事が、後の安定したキャリアへとつながるステッピングストーンとして機能する可能性が高いという事実に注目し、その要因を探る重要性を確認した。 国際比較の成果をもとに、改めて、義務教育終了後、英国の継続教育カレッジを経由し職業教育ルートをたどる若者のパネル調査計画を立案した。対象期間、対象教育機関、半構造的インタビューの内容・方法について、英国のレスター大学の社会学部の研究者等によるレビューを受け、確定した。
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