研究課題/領域番号 |
16K04584
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研究機関 | 関西国際大学 |
研究代表者 |
吉田 武大 関西国際大学, 教育学部, 准教授 (70512846)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アメリカ連邦政府 / 中等後教育改善基金 / 全米的必要性のある分野に関する特別プロジェクト |
研究実績の概要 |
今年度は、アメリカ連邦政府の一部局である中等後教育改善基金(以下、FIPSE)の全米的必要性のある分野に関する特別プロジェクトを対象として、この特別プロジェクトがどのような経緯のもとで導入され、いかなる特質を有しているのかを、1992年高等教育改正法の制定過程の検討を通して明らかにすることを目的として研究を行った。FIPSEは従来、各教育機関の自律的な教育の開発・改善を前提として教育に関与しており、FIPSE自体が各教育機関の教育のありようを直接に決定してきたわけではなかった。 ところが、1992年の法改正によって、こうした連邦政府と教育機関との関係に新たな変化が生じることとなった。つまり、FIPSEが、教育の開発や改善に関して全米的に必要性のある分野をあらかじめ定めて、それに即した特別プロジェクトに対して財政援助を行う仕組みが新たに制度化されたのである。 しかし、この点を明らかにした先行研究はみられず、FIPSEの展開過程や効果の検証、財政援助の特質を論じた研究が散見される程度である。 そこで今年度は、冒頭に掲げた目的を明らかにするために、2つの作業課題を設定した。第1に、連邦議会の上下各院において、全米的必要性のある分野に関する特別プロジェクトをめぐってどのような議論がなされたのかを分析し、第2に、1992年の両院協議会を経て全米的必要性のある分野に関する特別プロジェクトがいかにして制度化されたのかを検討した。 分析の結果、次の2点を明らかにした。第1に、国際交流、キャンパスの文化的環境、評価と普及という全米的必要性のある分野が、教育省長官といった連邦政府の側からではなく、中西部大学連盟という教育機関の側から提案され、法制化された。第2に、全米的必要性のある分野を設定する権限がFIPSEディレクターのみに規定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全米的必要性のある分野に関する特別プロジェクトに関する連邦議会資料を概ね収集することができ、また、その結果を論文にまとめることができた。 ただし、連邦議会資料以外の関連資料の収集という点で若干の課題が残されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策については、FIPSEにおける特定の教育プログラム設定の分析を行う予定である。 2008年の法改正によって、FIPSEのプログラム援助に、連邦政府の重視する特定の教育プログラムが設けられた。そこで、こうした特定の教育プログラムに関する財政援助がなぜ規定されたのかを、FIPSEの関連法令、具体的には高等教育機会法を手がかりとしながら検討する。検討に当たっては、高等教育機会法および同法制定に関わる議事録等の議会資料を活用しつつ、関係者へのインタビュー調査も実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 予算よりも若干少額で資料を入手することができたため。 (使用計画) 次年度の資料収集費用に充当する予定である。
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