本研究では、アメリカ連邦政府の一組織である中等後教育改善基金(以下、FIPSE)が財政援助を実施する際に、教育機関の提案する教育プログラムの開発・改善案を尊重しつつも、FIPSEの重視する教育施策がどのようにプログラム援助の中に組み込まれていったのか、その展開過程と意義を明らかにすることを目的としている。この目的を達成するために、以下の3点の研究課題を設定した。 第1に、FIPSEに対して教育プログラムの開発・改善に関する優先事項を提言する全米FIPSE委員会がどのようにして法制化されたのかを明らかにするために、1980年教育改正法の制定過程を分析した。検討の結果、1980年教育改正法によって全米FIPSE委員会の権限が具体的に規定されるとともに、諮問的な性格が強まったこと、全米FIPSE委員会の構成について、国民一般の代表者を含めるという考え方が基本的に維持されていたことを明らかにした。 第2に、全米的必要性のある分野に関する特別プロジェクトがいかなる経緯のもとで導入され、どのような特質を有しているのかを明らかにするため、1992年高等教育改正法の制定過程を分析した。検討の結果、全米的必要性のある分野が中西部大学連盟という教育機関の側から提案され、法制化されたこと、全米的必要性のある分野を設定する権限がFIPSEディレクターのみに規定されたことを指摘した。 第3に、特定の教育プログラムに関する財政援助が法制的に規定された経緯を明らかにするため、2008年高等教育機会法の制定過程について検討を行った。検討の結果、高等教育の学費等の上昇が特定教育プログラムの制度化に影響を及ぼしたこと、プロジェクトGRADについてはFIPSEに関する条文とは別の章に規定されたことを明らかにした。
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