研究課題/領域番号 |
16K04589
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研究機関 | 国立音楽大学 |
研究代表者 |
林 浩子 国立音楽大学, 音楽学部, 教授 (00587347)
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研究分担者 |
岩田 恵子 玉川大学, 教育学部, 教授 (80287812)
宇田川 久美子 相模女子大学, 学芸学部, 准教授 (90513177)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 子どもがかかわる世界 / 子どもがかかわる世界にかかわる保育者 / 二人称的かかわりの意味と関係構造 / 子どもと保育者の二人称的にかかわりを記述する / 二人称的かかわりから三人称世界へ / 情感から生起される「よさ」 / 共に生きる保育の援助 / 保育の営みの変革 |
研究実績の概要 |
本研究は、二人称的応答のかかわりの中での保育実践の再検討から、保育の営み全体がどのように開かれ変革されるか、その可能性を探ることが目的であった。「子どもがかかわる世界」「子どもと保育者がかかわる世界」「子どもと保育者のかかわりに研究者がかかわる世界」の三つの二人称的かかわりの先には、対象をより深く「知る」という知的営みがあった。そこでの「知る」は、二人称的かかわりから生まれる「感じる」という知り方である。それは自分の中の意識の感覚やその喚起でも、一般的な定義や理屈や、観察的眼差しでどこか表面的に「感じる」三人称的な知り方でもなく、対象と出合い、対象の内側に入り、対象に「なって」心を揺り動かされ、心の底から「感じる」ことである。前者の「感じる」は"feel of"に対して、後者の「感じる」は"feel for"=「感じ入る」と捉えた。 これまでの記録を「感じ入る」という視点で分析、考察を行ってみると、先に挙げた三つの二人称的かかわりが、対象になって、対象の内側から対象の訴えに耳を傾けるとき、対象の声が向こうから聴こえてきた。それでも、対象の本当の声がわらないこともある。わからなさをも受け入れ、その意味を長期間にわたって、知ろうとしていくことが二人称的応答や働きかけである。 保育者は、自分の内側だけの(一人称)省察ではなく、対象になって対象の内側(二人称)から意味を捉え直していくとき、保育者の意図や願いだけが先走らない本当の援助が対象から引き出されていく。と同時に、そこには、二人称的かかわりを基盤としながら俯瞰的な眼差しや省察(二人称的かかわりを基盤とした三人称)が存在しする。二人称的に子どもとかかわり、子どもを知るということは、子どもが「感じ入る」世界に「感じ入り」、わからなさに耐えながら、子どもと共に「よさ」(三人称的世界)を探求し開かれていく営みである。
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