研究期間をさらに延長していただき、6年目を迎えた。この令和3年度は前年度から続いてタイの子ども組織ルークスアが発行していた年次報告書の内容の検討に取り組み、その成果を研究報告書としてまとめた。検討した年次報告書は、これまでに入手した第1号(仏歴2459年、おおよそ西暦1916年)、第3~5号、第9号、第11~14号(仏歴2472年、おおよそ西暦1929年)であり、それぞれに記載されているルークスアの登録人数、ルークスアの入隊式の回数と入隊者数、ルークスアの各種試験結果、ルークスア隊の数、指導者の人数、各州単位の組織に対する支援金の収支、隊ごとの野外旅行などの統計を、本研究の報告書に掲載した。 従来、ルークスアはラーマ6世がイギリスのボーイスカウトを導入する形で発足し、学校教育に組み込まれて子どもたちへのナショナリズム教育に大きな役割を果たしたとされてきた。これらの統計を同時代の国勢調査などを用いながら検討することでで、ルークスアを通したナショナリズム教育の普及の実際を把握することができると考えている。残念ながら分析には至らなかったが、ナショナリズム教育の広がりを目に見える統計で表現できたことの意義は大きい。 本研究では1920~40年代のルークスアの機関誌『ルークスア・サヤーム』、当該時期の教員協会の機関誌『ウイッタヤーチャーン』、そして『ナンスーピム・ナックリアン』などの各種の教育雑誌の中から関連する記事を複写もしくは撮影した。これらの記事の内容分析も今後の課題であるが、ルークスアを扱う記事の有無や多少は、各時代のルークスアの位置づけを如実に物語ると考えている。他にも、当該時期のルークスアに関する書籍の購入、複写、撮影を行うことができた。 本研究を通して、1920~40年代のルークスアを概観する内容の発表を複数回行っており、研究課題について一定の成果を得ることができた。
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