本研究は、高等教育機関の教育・人材養成機能に注目し、高等教育における地域的な性質・機能の発展や展開について検討することを目的としている。 令和4年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、前年度に続き計画していた訪問調査等を実施することができなかったが、刊行物やオンラインでの情報収集を進めるとともに、調査可能性の広がりに応じて教員養成課程を新たな研究対象に設定してそれらの地域的な性質について検討した。教員養成課程は各県に設置されており、地元からの進学者や就職者の比率も比較的高いことに加え、教育内容に地域的な特色も一部反映されていることから、地域性が高い教育プログラムと考えることができる。しかし訪問調査の結果からは、教員養成課程を持つ大学と地元の学校教育との関係は地域性が高い(地域により異なっている側面が大きい)ものの、国立大学の教員養成系学部と私立大学の状況の違いや、特に地方部の私立大学において地域的な特色を強調していくことよりも教員養成課程の制度変更への対応に注力しなければならない状況であることといった点では共通点が見られた。 本研究では当初主に「地域学部」を対象としており、「地域学部」にはさまざまなルーツがあり、そうした学内の文脈に方向づけられながら新しい地域学部としての諸活動に当たっていることが明らかになってきたが、大学の地域的な性質や機能の発展を検討する上で、改めてその地域の文脈の影響の大きやその表出の基盤となる条件の存在が浮き彫りになった。
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