研究課題/領域番号 |
16K04597
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
岡本 智周 筑波大学, 人間系, 准教授 (60318863)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歴史認識 / 社会意識 / 歴史教科書 / 歴史学習 / 歴史教育 / ナショナリズム / 共生 / 世代 |
研究実績の概要 |
本研究は、2010年代の日本社会に生きる人々の歴史認識のなかで、国民意識と共生意識がいかに関連付けられ表現されるのか、そこに学校教育その他の場での歴史学習経験はどう関わるのかを探索するものである。戦後社会の変動に伴って変化してきた中等教育段階の歴史教育内容の特徴を指標とし、学習者の世代や教育経験と照応させた分析を行うことで、歴史認識の知識社会学的背景を検討する。 研究の初年度である2016年度は研究基盤の構築に主眼をおき、次の2つの主要課題を設定した。(1)2014年~2016年に刊行された中等教育用歴史教科書の内容を分析する。(2)歴史事象についての理解と評価、国民意識、共生意識を把握する社会意識調査のための調査票を開発する。 (1)のカリキュラム分析は、社会意識調査での歴史認識を問う項目を作成するための基礎作業として行った。資料としたのは中学校歴史・高校日本史・高校世界史教科書の2014~2016年に発行された版である。旧版との比較により2010年代半ばの改訂による内容の変化を確定し、歴史叙述の更新がもたらす意味を把握した。この作業を通して、『共生の社会学』所収の論文「歴史教育内容の現状と、伝統の学び方のこれから」、および『共生教育学研究』第5巻所収の論文“On Interpreting Society through Changing Texts”を発表した。 (2)については、歴史事象についての理解と評価を把握するための質問項目を作成し、成人に対する予備調査を行った。またその結果を研究代表者がこれまでに行ってきた社会意識調査の結果と合わせて考察し、本研究における本調査の準備を進めた。この作業を通して、『共生の社会学』所収の共著論文「「共生」に関わる社会意識の現状と構造」、および『月刊高校教育』第49巻第13号所収の論文「共生社会形成のカギとなる高校教育」を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年度は図書・論文刊行の機会に恵まれ、教科書分析から得られた知見や本研究の方法論についての発表が進展した。教科書資料の収集、データ化、分析は順調に進行したが、社会意識調査については本調査に向けた準備の段階である。
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今後の研究の推進方策 |
社会意識調査の本調査に向けては、歴史認識を問う質問項目に加えて、国民意識および共生意識を問う項目を作成し、調査票を完成させる。研究代表者はこれまで、自らが参加した研究プロジェクトにおいて「共生社会に関する調査」を複数回企画・実施しているので、それらの調査の内容と結果を参照しながら作業を進める。調査は回答者の同意を得て、かつ回答者が特定されることがないように十分に配慮して計画・実行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
社会意識調査の本調査が未実施であり、平成28年度予算計画中の調査実施に関わる経費に該当する分を次年度使用額とした。
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次年度使用額の使用計画 |
当初平成28年度に予定していた社会意識調査の本調査を平成29年度に実施するため、次年度使用額を使用する。
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備考 |
※「共生社会を視点に歴史認識に迫る」は筑波大学広報室サイエンスコミュニケーターによる記事。冊子体では『Tsukuba Future』第3号の日本語版・英語版の各10-11頁に掲載(筑波大学広報室、2016年4月)。 ※「高校生の頃にしてほしかったキャリア教育って何?」は国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センター発行の「キャリア教育リーフレット」シリーズの第1号(2017年3月)。
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