研究実績の概要 |
最終年度においては、保育者の行動における「対話的要素」を明らかにするために、保育者の行動に見られる非言語的メッセージを明らかにするとともに、ユマニチュードの理論を基盤とする対話的保育の指針をまとめた。 「対話的保育」とは、一人の子どもとの1対1の丁寧で誠実な関係を前提とし、対話の相手を「人間として尊重する」ことに直結するものである。ユマニチュードは、ケアを受ける者が「人間として尊重される」ことを実感し続けることができるよう、ケアのプロセスにおいてポジティブなメッセージを言語的、非言語的手段によって伝え続ける。伝達される非言語的メッセージは「平等・正直・信頼・優しさ・尊厳の尊重・慰め・喜び・慈愛」等(本田ら,2014) であり、保育ではこれらに加え「受容・承認・賞賛・寛容・励まし」等を伝達することが重要である。これらを伝達している保育者のポジティブ な行動としては、ユマニチュードの 3つの基本行動の他、「待つ」や「居る」等 の「静」の行動も含むことができる。 ユマニチュードはケアの行動を「技術」として提示しているが、保育においても保育者の日常的行動の在りようを、専門性を表すものとして捉え、その質の向上が求められる。そこで本研究の最終段階としてユマニチュードを基盤とする「対話的保育」の実践指針をまとめた。指針に示した基本行動は、ユマニチュードの基本行動であり、保育においても保育者の基本行動でもある「見る」「話す」「触れる」とし、加えて保育において子どもを尊重する上で見落とされやすい「待つ」行動について、その行動の意味、実践の意義を示した。 保育者が「対話的」であるためには、その意義とポジティブなメッセージをどのように伝達するかを深く理解することが不可欠である。ユマニチュードに基づく「対話的保育」は、子どもの最善の利益保障に立った保育の質向上に資するものとなり得ると考えている。
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