研究課題/領域番号 |
16K04603
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
川北 稔 愛知教育大学, 教育実践研究科, 准教授 (30397492)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 教員の福祉的行為 / 教員の福祉連携行為 / 子ども・若者育成支援 / スクールソーシャルワーク |
研究実績の概要 |
(1)学校教育と福祉関係諸機関の組織レベルでの連携に関して、また(2)学校教員の立場からみた福祉へのアプローチについて調査を進めた。 (1)引き続き、大学が位置する愛知県西三河地方の自治体における子ども・若者育成支援に関するネットワークに参画しつつ、情報収集を進めた。A市の子ども・若者地域協議会では、NPOを主体として学校と福祉関係諸機関の連携に関する調査を実施した。結果として、学校においては目の前の支援対象者を「どこに繋ぐのか」が課題となっており、逆に福祉関係機関では「支援対象者の情報をどのように入手するか」が課題となることが確認できた。 それでは、学校はどのように連携先機関とつながることができるか。具体的には不登校状態のままで中学校を卒業する生徒に関する「つなぎ方」や「つなぎ先」が一つの試金石となる。 B市の保健所における「ひきこもり」に関するネットワーク会議では、管内の市町を対象に「卒業後の相談に関する引き継ぎ」「情報の周知」を実施しているかの調査を新たに実施しており、貴重な資料となった。具体的には、市町独自の相談員が保護者の了承を得て相談を継続しているなどの実態が明らかになった。 またC市(県外)での訪問調査では、地域の福祉関係機関による学校へのアプローチに関する先進事例を情報収集することができた。具体的には、中学校卒業時のタイミングを待たずに、スクールカウンセラーと相談をしている保護者などの情報提供を学校に依頼し、卒業後にも持続する関係構築を図っていることである。 (2)学校教員側からのアプローチとしては、勤務校における教職大学院の授業を通じて、現職者として福祉関係諸機関を利用した経験を訪ねる質問紙調査を実施した(研究実施期間の2年目から継続)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施期間の1年目(平成28年度)、2年目(平成29年度)と同様に、学校教育と福祉関係機関との組織的な連携について情報収集を進めることができた。 半面、個々の学校教員側から見た福祉的行為の検討が進まなかった。勤務校における教職大学院の授業を通じて、学校教員が福祉関係機関と連携した経験などを尋ねる調査を継続して実施した。 今後の課題は、個々の教員へのインタビューなどを通じて、組織的な連携などに関する知見を、個々の教員が実践可能な具体例へと落とし込むことである。この作業が遅れた事情として、本研究と関連する別テーマの研究課題(中高年における「ひきこもり」状態の長期化)に関する調査の取りまとめに時間を割かれたことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
期間中に実施できた調査などに加えて、個々の教員の福祉的行為や福祉連携行為についてのインタビューなどを実施したい。勤務校における教職大学院では質問紙調査を通じて、個々の教員の実践について把握を進めており、より個別的なインタビューによってモデルとなりうる実践を記録し、検討を進めることが期待できる。 また県内のD町においては、義務教育における不登校児童生徒の全般的な把握を推進しており、本研究課題における調査との協力関係構築が期待できる。特に、個別の教員や、教育委員会で指導的な立場にある職員が不登校児童生徒を福祉関係機関にどのようにつないでいるか、「つなぎ先」「つなぎ方」に関するインタビューを実施したい。 勤務校における教職大学院では、授業を通じて「生徒指導リソースブック」を編集し、不登校や発達障害などの各領域における実践的な対応方策(レパートリー)をまとめた(平成30年度)。この取組をさらに発展させる中で、本研究で得られた知見の具体化や、実践への還元に努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題と部分的に重なる研究課題(中高年における「ひきこもり」状態の長期化)について、調査の取りまとめを行う必要が生じ、十分な研究時間が確保できなくなった。そのため、次年度使用額が生じることになった。 使用計画としては、本研究で取り残された研究課題について追加的な調査を実施し、知見の取りまとめを行いたい。具体的には、個別の教員が実践する福祉的行為・福祉連携行為についてのインタビューを実施することである。 すでに学校と福祉関係機関の組織的連携については現地調査や情報収集を進めたところであり、こうした知見の内容を、教員個人のレベルで実施できる行為のレパートリーと対比して、本研究全体としての知見という形で取りまとめたいと考えている。 以上を踏まえ、次年度使用額をインタビュー調査のための旅費、研究のとりまとめに要する研究会参加のための旅費に使用する予定である。
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