研究課題/領域番号 |
16K04605
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
倉石 一郎 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (10345316)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 包摂と排除 / ニクラス・ルーマン / 同心円モデル / 福祉教員 / 常設地域学校 |
研究実績の概要 |
当初の予定では本年度は、視野を英国にまで広げ、1930年代に同国で設置された教育福祉官(education-welfare officer)制度がいかなる形で公教育機能の福祉化と平準化に寄与したかを検討する予定であった。しかしながら新型コロナウイルス感染拡大により海外渡航はもちろん国内での資料調査も困難になり、計画は大幅に変更を余儀なくされた。具体的には、これまで収集した資料の蓄積がある、日本の福祉教員および米国の教育福祉事業について、手持ちの資料を活用してさらに研究の前進をはかった。前者については日本社会事業史学会学会誌『社会事業史研究』58号掲載の論文として、後者については米国ニューヨーク市の常設地域学校(All-Day Neighborhood School)に関する研究を日本教育学会第79回大会(オンライン)で発表する形で、成果にすることができた。また教育福祉を考える最重要概念である包摂と排除をめぐって、ニクラス・ルーマンの理論を参照しつつ整理と考察を加えた口頭発表を日本教育社会学会第72回大会(オンライン)で行った。この口頭発表に加え、従来公表してきた包摂と排除に関する論考の一部に手を加えて再構成し、その同心円モデルの克服を企図した単著『教育福祉のメタ理論:包摂と排除の迷宮へ』にまとめる作業を集中的に行った。同書は2021年6月に明石書店より刊行予定である。さらに、目標としてきた英文雑誌への投稿も行い、Educational Studies in Japan: International Yearbook, Vol.15に掲載が決定した。以上のように、コロナ禍ではあったが着実に研究を進めることができたと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究課題に即した学会報告2件および論文執筆1本を通じて、従来からの検討課題を深めることができたほか、単著『教育福祉のメタ理論:包摂と排除の迷宮へ』の執筆作業を通じて包摂と排除に関するメタ理論的整理をすることができ、研究の展望がより明確になったため。加えて、目標としてきた英文雑誌への投稿も行い、Educational Studies in Japan: International Yearbook, Vol.15に掲載が内定するなど、研究上の進捗を達成することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度は、これまでの研究成果の一つの達成点である『教育福祉のメタ理論:包摂と排除の迷宮へ』に対するフィードバックを謙虚に受け止め、さらなる自分の研究課題を明らかにすることが第一の目標である。第二に、新型コロナウイルスの感染状況を踏まえつつ、英国の教育福祉に関する調査研究の可能性を模索し、文献レビューなど可能な範囲で一定の成果を得ることを目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大の影響により国内・国外への出張の機会が激減し、また研究計画の一部変更を余儀なくされたことから、購入物品にも変更(減少)が生じたため、次年度に繰り越してさらなる研究を継続することとしたため。
|