研究課題/領域番号 |
16K04614
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
須崎 康恵 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (30382302)
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研究分担者 |
水野 文子 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (70271202)
岡本 希 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (70364057)
御輿 久美子 奈良県立医科大学, 医学部, 非常勤講師 (20106503)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ジェンダーと教育 / 男女共同参画 |
研究実績の概要 |
奈良県立医科大学の医学科全学生(男子503名、女子188名、合計691名)と本学附属病院の初期臨床研修医(男性53名、女性30名、合計83名)を対象として、平成28年度に男女共同参画とアカデミックキャリア男女間格差に関する認知度や意識、アカデミックキャリア形成意欲、自身のキャリアプラン、アカデミックキャリア向上に必要な情報や機会等について、リッカート5段階尺度による評定質問を中心に、設問によっては自由記載形式を採用し、無記名質問票直接配布回答方式で意向調査を行った。 医学科学生の有効回答率は95.5%(男子95.6%、女子95.2%)、臨床研修医の有効回答率は48.2%(男性35.8%、女性70%)であった。卒後の具体的なキャリアイメージについては、医学生の44.4%が「ある」と回答し男女学生間に差を認めなかった。学年別では、各診療科で臨床実習を経験した5、6年生では58.3%が「ある」と回答し、臨床実習前の1年生から4年生の37.7%と比べると有意に高い結果であった。臨床研修医では、男性の57.9%が臨床研修後の具体的なキャリアイメージが「ある」と回答したのに対して、女性は23.8%と低い傾向にあった。また、昇進意欲に関しては、男子学生の42.2%、男性研修医の52.6%が「将来、管理職(教授・部長など)に就きたいと思う」と回答したのに対し、女子学生で「思う」と回答したのは15%、女性研修医では0%と男女間で明らかな昇進意欲の差を認めた。臨床研修医は、自身のキャリア形成を考える際に、長時間労働や休日・休暇の取得等の職場環境を不安視する傾向が学生と比べると高いが、男女間では有意な差を認めなかった。一方、男性臨床研修医は女性と比べて自身のキャリア形成において学位(博士)取得を重要視しており、男女研修医の間に有意な差を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、予定していた医学科学生と臨床研修医を対象とした意向調査を実施し、調査結果の分析も概ね終了している。研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に行った意向調査分析の結果に基づきアカデミックキャリア男女医師間格差解消を目指した新たな医学部ジェンダー教育プログラムを作成する。 意向調査から、男女共同参画と男女間アカデミックキャリア格差に関する認知度や意識、キャリア向上に対するモチベーションに性差が存在し、女子学生が明確なキャリアプランを描きにくいことが明らかとなっているため、現状を学生に伝え、対処法や解決策を男女混合のグループで学生自身に考えさせるよう工夫したプログラムを作成する。男子学生には、学業面に差がない女子学生が、性別役割分担感等社会通念から、将来のキャリア形成に不安を抱いていることの理解を促し、解決策を女子学生とともに考える中で、男女共同参画の意識を高める。また女子学生には、指導的立場に立つ女性医師の増加は、医学界に多様性を生み、医療を更に発展させる可能性があることを伝え、自身がその当事者であるという自覚を促す。さらに、身近なロールモデルである先輩医師や教員の現状とキャリア形成の過程を紹介し、 意向調査から得たアカデミックキャリア向上に影響する内的および外的要因の因子分析の結果を基に、アカデミックキャリアを阻むと予想される外的要因の予防策や対処法を示す。 研究代表者と分担者、本学の教育開発センターおよび臨床研修センターに所属する複数の教員が協働し、各学年の成長に合わせた卒前・卒後の継続的な医学部ジェンダー教育プログラムを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、他大学の医学部生や臨床研修医に対しても意向調査を行う予定をしていたが、平成28年度は奈良県立医科大学の学内の学生と臨床研修医に対してのみ意向調査を実施したため、計上していた意向調査打ち合わせのための旅費が不要となった。また、資料やデータ整理、データ入力の人件費を計上していたが、法人が雇用する事務職員の協力が得られたため人件費が不要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、意向調査のさらなる結果解析に携わる人に対して人件費を必要とする。また、教育プログラム作成に経費も必要であり、研究結果を国内外の学会で発表予定にしている。
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