研究課題/領域番号 |
16K04616
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研究機関 | 福岡県立大学 |
研究代表者 |
四戸 智昭 福岡県立大学, 看護学部, 准教授 (70347186)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 不登校 / ひきこもり / 支援困難な親 |
研究実績の概要 |
不登校やひきこもりの子を抱えた親のグループミーティング(以下GM)の調査からは、GMなどの支援に参加することを躊躇する親、自分で何もしようとしない他者依存が強い親など「支援困難な親」たちがいることがわかってきた。この研究の目的は、こういった「支援困難な親」たちが、自己の心理的特徴や状況を判別し、自らの行動修正を促すためのチェックリストを開発することにある。 本年度(29年度)の計画では、親たちが子どもの不登校やひきこもりといった問題行動そのものを変えようとするのではなく、親たち自身が変えるべき行動変容(共依存性など:親が子をコントロールしようとしすぎない等)のポイントを抽出することであった。研究者は、臨床実践から収集した情報に基づいて、「支援困難な親」たちが問題を解決するために、親がまずすべきポイントを次の4つに絞り込んだ。①「無気力(Apathy)になることを避ける」家族(子)の問題に対して無気力になることをさける。②「コントロール(Control)しようとすることを避ける」子どもといえども親が無理に子どもをコントロール(働かせる、学校に行かせる等)しようとしない。③「孤立(Isolation)することを避ける」自分の家族(子)の問題を恥と思い込んで隠そうとしない。④「専門家に過度に依存(Dependence)することを避ける」保健師やソーシャルワーカーに訪問支援してくれればそれだけでいいと安心しない等。これら4つの頭文字から、不登校やひきこもりを抱えた「支援困難な親」たちがまず実践すべきポイントを「親が避けるべきACID(酸味)」とした。 この親が避けるべきACIDは、すでに相談対応で支援困難な親に伝え、その実践をするように試みている。また4つのポイントに基づいて作成したチェックリストも、学習会の場などでセルフチェックしてもらい、質問や意見などの情報を収集している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、上記のような「支援困難な親」の特徴を郵送法によるアンケート調査によって収集予定であったが、今年度は①福岡県の保健所が主催するひきこもり相談会での相談対応(20ケース)、②親の会での学習会やオープンカウンセリング(30ケース)、③個別相談対応(20ケース)によって、「支援困難な親」の情報(状況)は、臨床実践から十分に情報収集が行えたことから、これらの情報を分析し、上記のように4つのファクターを抽出することができた。 また、この4つのファクターに基づいたチェックリスト項目についても作成し、実際に親の学習会やオープンカウンセリングで、当事者の親たちにチェックリストを利用してもらっている。そのため、当初の研究計画については、得られる結果についてはおおむね計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度(平成30年度)の研究では、不登校やひきこもりの家族支援団体における5回の講演とオープンカウンセリング(20ケースを予定)、また保健所での個別相談会(10ケースを予定)、個別相談(20ケースを予定)を通じて、親のグループミーティングなどに参加することを躊躇する親、外部に支援をあまり求めず何でも自分でしようとする、いわゆる「支援困難な親」の状況について引き続き聴取を行うとともに、昨年度の研究で抽出した「親が避けるべきACID」を個別相談対応などで親たちに紹介し、実践してもらうことを継続する。また、この4つのポイントに基づいて作成したチェックリストについても、親たちに記入してもらいチェックリストの精度を上げることである。
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