研究課題/領域番号 |
16K04617
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研究機関 | 福岡県立大学 |
研究代表者 |
田中 哲也 福岡県立大学, 人間社会学部, 教授 (50207114)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エジプト / 高等教育 / グローバル化 / 市場化 |
研究実績の概要 |
経済改革・構造調整プログラム導入後、無償の公教育を原則としてきた(いる)エジプトにおける国立高等教育制度に「部分的に」有償制を導入し、私立大学設立解禁により高等教育制度全体を「市場化」する正当化に用いられているのが「グローバル化」であるが、エジプトのいくつかの大学での訪問調査や、カイロ大学、アズハル大学、高等教育機関等所属のエジプト高等教育に関する研究者や、社会的発言を行っている専門家(元高等教育大臣や前高等教育省大学改革委員会委員等を含む)のインタヴュー等で収集した資料や情報を整理し、以下のような現状を確認することができた。 「外国大学」をモデルとしての私立大学の開設を通しての有償化は1990年代から始まりその規模と影響は徐々に拡大してきたが、国から財政的に運営に必要な交付金を担保されなくなった国立大学においても「外国語」による授業の提供や外国の「カリキュラム制度」導入等を名目として学生に支払いが求められる、事実上の授業料の徴収が導入され高等教育の実質的有償化が進展しつつある。 こうした有償化政策にもかかわらず社会契約(憲法)上無償教育制度の建前を未だ維持していることから、例えば、現在日本政府の協力の下、国立大学として、大学院大学から学部を開設し拡大されつつある私立大学並みの授業料を必要とするエジプト・日本科学技術大学は、他の国立ではあるものの「高等教育大臣-国立大学最高会議」下にはない大学としてその有償化が正当化されているなど、エジプトにおける高等教育制度は過渡期にある。 いずれにしても、私立大学のあり方も含め現行制度を維持し続けることは困難であり、どのような方向で高等教育制度の改変が収斂していくか注意深く観察を続ける必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当該年度、疾病により入院をともなう長期の加療が必要となったため、予定していた現地、エジプトでの調査を断念せざるをえなくなった。そのため、平成29年度に予定していた調査は次年度に行うこととし現地調査経費として直接経費の約70%を平成30年度に繰り越し、本年度はこれまでの現地調査等により収集したものに加え、本年度、ネットや図書館、新聞等、本邦から入手できたものを加えた資料や情報を整理、分析し研究した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでと同様、文献的・統計的資料、大学の訪問調査、高等教育関係者や研究者からのフォーマル・インフォーマルな情報収集や意見交換を行い、それらに基づいてエジプトにおける高等教育制度の市場化、グローバル化についての類型化を行うとともに、 市場化、グローバル化に関してこれまで教育社会学、比較教育学において蓄積されてきた枠組みの中で他地域における事例と比較、考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
・疾病治療のため、平成29年度に予定していた現地調査を行うことができず、経費を執行することができなかったため。 ・平成30年度に行う資料収集において執行する。
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