研究課題/領域番号 |
16K04618
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研究機関 | 藤女子大学 |
研究代表者 |
伊井 義人 藤女子大学, 人間生活学部, 教授 (10326605)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オーストラリア / へき地教育 / 学力格差 / パートナーシップ / 学習環境の改善 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、豪州・へき地小規模校の学習環境の質向上をめざした教育政策および実践を分析し、その地域や学校の特性を「強み」として活用する方策を明らかにすることにある。そのため、平成28年度は第一に豪州におけるへき地小規模校を対象とした先行研究を整理すること、第二に先行研究はへき地の学校教育に対してどのような「まなざし」を向けていたのかを明らかにすること、第三に同国における全国学力調査におけるへき地とそれが以外の地域の学力格差の分析に焦点をあて、研究を進めてきた。 平成28年度は、日本比較教育学会第52回大会(6月:大阪大学)「オーストラリアの遠隔地学校における格差と差異-教育政策における『違い』の捉え方」、オセアニア教育学会第20回大会(12月:四国学院大学)「遠隔地における学力低迷への『まなざし』から見える構成概念-オーストラリア各州における政策の比較分析を通して-」において研究成果を公表した。 ここでの研究成果からは、第一に現状として、へき地とそれ以外の場所の学校においては顕著な学力格差が存在し、その格差を是正することが教育政策においては重要視されていることを明らかにした。第二に、この学力格差の是正は歴史的に見ても40年間指摘され続けている教育課題であり、教育予算においても、へき地小規模校に対しては優遇措置がなされている状況にあることも指摘した。その一方で、以上二点の結果からも、第三にへき地の学習環境が「劣っている」状況にあることに教育支援策においても焦点が当てられており、へき地の長所となる「特性」を活用する施策はいまだ実施されていないことを改めて明らかにした。 ただし、へき地を対象とした教育政策においては、地域コミュニティ内での学校を取り巻く組織とのパートナーシップの構築が求められており、その実施状況に今後着目し、現地調査を行うという視点も提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先行研究の整理を通した、本研究を推進するに当たっての視点の提示は予定通り、二回の学会発表によって遂行することができた。しかし、3月に予定していた現地調査をキャンセルせざるを得ない状況になったため、その点では研究の推進状況はやや遅れている。しかし、平成29年度には数回現地調査をする見通しが立っており、この遅れは挽回できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、オーストラリアでの資料収集、学校への現地調査などを中心に計画している。具体的には、28年度に実施できなかった分も含め5月・9月・3月の三回現地調査を予定している。調査場所は、シドニー(文献の資料収集)、ブリスベン・タウンズビル(教育省・教育研究者へのインタビュー調査)、木曜島(学校訪問)を計画している。 また、研究成果も6月の日本比較教育学会、12月のオセアニア教育学会での発表、学内紀要や学会ジャーナルへの投稿を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に予定していた現地調査をキャンセルせざるを得ない状況にあったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、この未使用額を利用して、豪州のへき地の現地調査および都市部での資料収集を実施する予定である。
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