研究課題/領域番号 |
16K04623
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
酒井 朗 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (90211929)
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研究分担者 |
伊藤 秀樹 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (80712075)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 包摂的学校文化 / 特別支援教育 / 特別支援トラック / 就学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、義務教育を担う小中学校や就学前教育を担う幼稚園・保育所・認定こども園が、多様な子どもたちをどのようにして受け入れ、指導・保育しているのかを明らかにすることにより、格差の拡大が進行する排除型社会の下ですべての子どもたちを包摂しうる包摂的学校文化を醸成するための方途をさぐることにある。 本年度は昨年度に実施したいくつかの小学校や幼稚園におけるインタビュー調査をもとに、就学をめぐる一連の手続きに焦点を当て、その過程での一群の子どもたちが特別支援の対象者として、選抜されていく過程を明らかにした。金澤(2013)の指摘に基づけば、日本の特別支援教育の構造は「インクルーシブ」を目指しながらも、通常教育を受ける子どもから通常教育だけでは難しい子どもを選別し、彼らを「特別な支援が必要」だと認定することにより通常教育から排除していくように機能していることが予想される。 このような問題意識に基づいて、第一に、特別な支援を必要とする子どもとして特別支援教育を受けている児童生徒数の現状とその経年変化ならびに地域差について概観した。第二に、就学の手続きに光を当て、当該の子どもが、障害のある児童生徒であるとして、特別支援学校や特別支援学級に就学先が決定されるまでのカテゴリーの運用や、制度の仕組みを明らかにした。第三に、一旦就学時に何らかの特別な支援が必要であると認定され、特別支援学校や特別支援学級に選別された子どものその後のキャリアについて検討した。その結果、そのキャリアはかなりの程度固定的であり、いわば「特別支援トラック」と名付けられるような、かなり明確なトラックが存在していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を通じて、包摂的学校文化を醸成していく上での課題が焦点化されてきており、その反面で現状の学校教育のプロセスにおいて、多様な困難を抱える子どもたちがどのようにして排除されていくのかが浮かび上がってきている。当初予定していた質問紙調査は先送りになっているが、反対に研究テーマへの追究は進んでおり、全体としては概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の問題関心に沿って、いかにすべての子どもを包摂した教育を達成できるかについて、とくに幼児期の教育から小学校に移行する就学の時期に着目して研究を進めていく。その際、1つの課題は幼児期の教育ではさまざまな子どもの生活を把握し、それに応じた教育を行う用意があるのに対して、小学校教育では子どもの生活が把握できず、それに応じた教育を行えないでいる状況が見られることである。この点について、両者の指導観、保育観に迫り、さらに明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はヒアリングならびに既存の統計データの資料解析を中心に進めたため、研究費を要さずに作業が進められる部分が多かった。また、次年度は量的調査を含めて各種の調査を展開するため、次年度に研究費の一部を回すこととした。
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