研究課題/領域番号 |
16K04624
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
澤田 稔 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (00367690)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 批判的教育学 / 民主主義 / カリキュラム / 教育方法 / コンピテンシー |
研究実績の概要 |
基礎的・理論的研究としては、教育社会学の事典論稿として批判的教育学、及びその理論的源泉としてのネオ・マルクス主義に関する解説文の執筆に伴う、批判的教育学に関する最新の主要文献やネオ・マルクス主義に関する代表的文献のレヴューを通して、批判的教育学の現時点における理論的到達点と課題を明確化することで、コンピテンシー・ベースの教育と新自由主義的教育政策との関連を批判的に論じるための準備作業を進めた。 応用的・実践的研究としては、批判的教育学の観点から、「社会に開かれた教育課程」、「資質・能力(コンピテンシー)に基づく教育課程」、「主体的・対話的で深い学び」、「カリキュラム・マネジメントの確立」等を改革の主な柱とした改定学習指導要領(2017年)が含む問題点の論評を学会発表で行った。さらに、「より公正な学校教育に向けたエビデンス・ベースド・アカウンタビリティはいかにして可能か」という問いを設定して、昨年度に続いてボストンにある公立の幼少中一貫校であるMission Hill Schoolで実地調査を重ね、2018年度に社会学系学術雑誌に掲載予定の論文の執筆に向けたデータ収集を行った。 この他には、他方、日本の教育現場で各教科や道徳の授業研究にもアクション・リサーチ的に関わりながら、本科研の課題追究に資する情報を収集し、各学校現場で共有した。さらに、21世紀型コンピテンシー論に関する批判的考察のために、昨年度の企画を発展させるかたちで、PISAの批判的検討をテーマとした国際シンポジウム開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は学術論文を公刊するすることができなかった点でやや研究成果の発表予定に遅れが出ているが、翌年度には発表できる見込みである。また、海外における実地訪問調査をもう1回行えなかったが、実施した調査でかなり重要なデータを収集できたので、最終的には目標としていた水準の研究成果を残せる見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
基礎的・理論的研究としては、N.フレイザーの政治哲学的議論(「再配分の政治」と「承認の政治」という正義論の概念)を敷衍して、カリキュラム編成に関する基礎的な規範理論としてモデル化する作業をさらに進める必要がある。その上で、この理論モデルに親和的な実践を展開していると考えられる実践事例として、Mission Hill Schoolに関するモノグラフの一部を、入手した一次資料や実地調査で得たデータも駆使して、論文化する作業を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内での学校教員を対象とする講演その他の業務の都合により、当初予定していた海外での実地訪問調査を実施できなかったため。
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