最終年度となる2018年度は、研究代表者の山崎が台湾(2018年9月と2019年3月の2回)、研究分担者の日暮が香港(2018年8月)、中国(2019年3月)で調査を行った。山崎は国立金門大学、日暮は汕頭大学、北京航空航天大学と、新たな大学の書院ないし学生寮を視察し、教職員の聞き取りを行った。各大学の書院ないし学生寮の教育機能の大きさは、それぞれであったが、今後の調査に向けてネットワークの拡大が図られた。 2018年6月の日本比較教育学会では、山崎が「『博雅』と『通識』のあいだ―台湾の大学における教養教育と一般教育―」、日暮が「香港の大学における書院制教育の導入と展開に関する一考察」と題して、台湾と香港の事例について、研究発表を行った。また、日暮は同年8月の日本教育学会第77回大会でも、「中国の大学における教養教育改革の一側面―現代書院制教育の導入過程に着目して―」と題する発表を行っているが、これらの発表題目が示唆する通り、今年度は書院教育と不可分の関係にある教養教育改革の研究に重きを置いた。2018年9月の日本国際教育学会第29回大会では、同大会の課題研究企画として、中国・江蘇大学から史媛媛講師、台湾・淡江大学から薛雅慈副教授を招聘し、「高等教育における学住一体をいかに実現するか?―中国語圏における「現代書院制教育」の示唆―」と題する2時間のセッションを行った。山崎が司会、日暮がコメンテータを担当し、中国、台湾における書院教育の歴史と現状について、体系的かつ包括的に議論した。同セッションの記録は、2019年9月刊行予定の同学会の紀要に掲載されることになっている。 また、本研究課題の延長線上の実践として、2018年7月にマカオ大学呂志和書院の学生6名が来日、2019年2月には、日本の大学生8名が同書院に1週間滞在し、マカオ大学の書院教育を体験している(山崎の企画による)。
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