研究課題/領域番号 |
16K04626
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
山本 志都 東海大学, 文学部, 教授 (30336424)
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研究分担者 |
猪原 龍介 亜細亜大学, 経済学部, 准教授 (20404808)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 異文化コミュニケーション / 異文化感受性 / 異文化間教育 / 異文化トレーニング |
研究実績の概要 |
平成30年度には次のことを行った。 1つ目として、異文化受容のモデル化と「異文化感受性」尺度開発の予備研究を目的にインタビュー調査を行った。異文化感受性とは、自分と他者あるいは社会や環境との関係性における差異性の経験であり、Milton Bennett(1986)の異文化感受性発達モデルはその認知や態度の発達過程を示す。調査では想起してもらう異文化に統一性を持たせるため、外国人との経験を対象とした。外国人との交流で過去に葛藤を経験したことがある人物10名に半構造化面接によるインタビューを行った(平均約90分)。基礎的な考え方には、TEM(複線径路・等至性モデリング: Trajectory Equifinality Modeling)の理論的枠組みが用いられた。山本による過去の研究の探索的因子分析で得られた構成概念と新たに先行研究から抽出した異文化感受性に関わる概念から12枚のカードを作成し、インタビューの後半で用いた。過去から現在に至る外国人に対する気持ちや態度について、その変化のプロセスの道筋をたどりながら、あてはまるカードを並べてもらった。分析結果に基づき異文化感受性の尺度に用いる構成概念を精緻化した。 2つ目として、異文化受容と異文化間教育という観点から開発した教育ツール「CSE(コンテクスト・シフティング)エクササイズ」について、「分けるカテゴリー化とつなぐカテゴリー化への気づき:CSE実習の分析から」を異文化コミュニケーション学会年次大会にて発表した。 3つ目として、「関係構築を可能にする多様なコンテクストの創出:CSEの実践」論文を異文化コミュニケーション学会紀要に投稿し査読を経て受理された。2019年5月に発行予定である。 4つ目として、「異文化感受性を再考する:認知的複雑性と非対称性のもたらす異文化的状況に注目して」を多文化関係学会年次大会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は経済学的な観点から異文化コミュニケーションを捉える研究と、質的研究の方法論について検討することが主となる結果であった。 平成29年度には、日本国内で外国人と接触交流のある人びとを対象とした研究と、異文化受容において重要な認知的枠組みの切り替えであり共感と関わる「コンテクストシフト」を異文化コミュニケーション能力としてどのように教育・トレーニングすることができるかについて、具体的な方法論を確立することができた。 これに続いて平成30年度には、異文化受容をモデル化し異文化感受性の尺度を開発するためのインタビュー調査を行うことができた。これによりモデルと尺度に使用する概念を精緻化することができた。また昨年度に引き続き具体的な異文化間教育の方法論としてコンテクスト・シフティング・エクササイズ(CSE)の実施報告と調査結果を年次大会で発表し、学会紀要に投稿することもできた。 平成31年度の最終年に向けた有用な研究が展開できたと言える。しかし、異文化受容のモデル化と異文化感受性の尺度化に関する分析および研究報告や論文投稿にはまだ課題が残されている。したがって、全体としてはおおむね順調な進展とさせていただきたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度には、これまでの研究結果に基づいて質問紙調査を行う予定である。今年度実施した面接調査に基づき、まず異文化受容のモデル化を試みたい。そして質問紙調査によって異文化感受性の尺度開発に取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時と計画の進め方に変更のあったためである。経費のかかる全国規模で行う質問紙調査の実施時期は、申請時に平成29年度であったのがこれまで慎重に進めてきて、最終年の平成31年度となったために、今回の次年度使用額が生じているが、計画自体は順調に進んでおり問題はない。
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