研究課題/領域番号 |
16K04628
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小林 敦子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (90195769)
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研究分担者 |
原田 哲男 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60208676)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 小学校英語教育 / 中国 / 教育政策 / 文化多様性 / 台湾 / イマージョン英語教育 |
研究実績の概要 |
【研究目的】①中国での小学校英語教育の導入が超大国化政策とどのように連動して進められているのか、②中国の少数民族地域、農村部における小学校英語教育の課題、③中国の隣国である日本の小学校英語教育はどうあるべきか、以上を解明することにある。 【研究方法】1.2016年度調査(参与観察、インタビュー、アンケート調査)、(1)中国都市部:1)北京(2校)、2)西安(4校)、3)広州(2校、1幼稚園)(2)中国少数民族地域及び農村:1)内モンゴル自治区モンゴル民族小(1校)、2)河北省農村(1校)(3)台湾 1)台北(2校)2)原住民教員インタビュー、(4)荒川区調査 2.参与観察で得られた映像資料の分析(原田哲男研究室の協力) 【研究成果】(1)中国における英語教育の進展は超大国化を支える基盤となっている。(2)中国では英語だけで授業を行うことができる大量の小学校英語教員が育っている。(3)児童の英語レベルも高い、(4)英語教育に取り組む父母の熱意は都市部で高い。(5)中国都市部では小学校の段階から積極的に欧米と国際交流を実施する小学校が少なくない。(6)中国農村部では、一人の教員が全教科を指導するため、英語の専門外の教員が授業を担当することもあり、問題が生じている。(7)荒川区は積極的に小学校英語の教育実践を積み上げてきた自治体であるが、研究成果に基づき「荒川区小学校英語教育指針」の改定に関して意見を具申した。 【研究成果の公表】①論文(「現代中国におけるイマージョン英語教育に関する考察―陝西師範大学付属小学校での実践に焦点を当てて」『学術研究』、65号、2017年2月)等、②国際シンポ(「一帯一路戦略背景下民族教育発展国際学術研討会」、銀川・寧夏大学、2016年10月)、③講演会の開催(早稲田大学、2018年1月、「中国の幼稚園におけるイマージョン英語教育―延安摩西幼稚園の事例」)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
授業の参与観察、聞き取り調査や、資料収集が順調に進んでいる。とりわけ、中国や台湾の小学校で授業の参与観察をする機会を得ることができた。また各地での調査参加者は以下の通りである。北京(小林・研究代表者)、西安(小林、原田・研究分担者、東・連携研究者、花井・研究協力者)、広州(小林、原田)、台湾(小林)。 (1)中国、台湾の学校での調査。1)北京では、北京大学附属小学校など2校を訪問、参与観察を行うとともに教員インタビューを実施。西安では、西安外国語大学が実施してきた「中国カナダアメリカ英語イマージョン教育研究プロジェクト」による実験校である陝西師範大学附属小学校、陝西師範大学附属実験小学校などを見学。授業の参与観察の後、教員、大学関係者、専門家が参加して開催された検討会で中国側教員と活発な意見交換を実施。2)モンゴル民族小学校(フフホト)、河北省農村部小学校(青龍県)での参与観察、教員インタビュー。3)台北市の文化小学校及び天母小学校で参与観察(共に、公立小学校)。また教科書、教員研修関係資料の収集を実施。その他、台湾の原住民(アミ族)教員へのインタビュー(英語教育、第三言語教育について) (2)中国、台湾での学校訪問、調査研究によって、小学校英語教育に関する国際的な共同研究のネットワークを形成した。具体的には、北京師範大学多元文化教育研究中心、西安外国語大学、陝西師範大学、広東外語外貿大学、延安摩西幼稚園との協力関係を構築できた。(3)その他の諸外国においても小林は英語教育の授業を見学した。シンガポール(中学・高校3校)・香港(中学・高校)、タイ(小学校2校)、マレーシア(中学・高校2校)。 (4)荒川区での小学校及び中学校における英語教育調査(授業見学・参与観察、教員インタビュー)。 (5)調査結果を国際シンポで発表し、また早稲田大学においてもゲストを招へいし、講演会を開催した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)文献研究;小学校英語に関わる基礎的な文献(教育概況、統計資料)を収集し理論的研究を行う。そのため、中国や東アジア地域における小学校英語教育関連書籍、理論研究、教科書、教師用指導書、副読本などを50冊購入する。 (2)打ち合わせ;国内で2~3回の会合を実施する。中国側(西安外国語大学、北京師範大学、北方民族大学)と現地調査(西安、延安、北京、銀川)の具体的な日程について相談する。また、アンケート調査のフォーマットについて、再検討する。 (3)海外調査;9月に小林敦子(研究代表者)は北京及び寧夏回族自治区・銀川、西安、延安において、学校訪問、アンケート調査(小学校児童、父母、教員)及びインタビュー調査を実施する。海外研究協力者の李恩珠は、韓国・ソウルにおいて、学校訪問、父母アンケート調査を実施する。原田哲男(研究分担者)は、海外においてイマージョン英語教育について調査を行う。また、花井みわは、海外調査の調整などで協力する。海外調査で得られたデータ分析について、原田哲男がアドバイスする。 (4)国内調査;昨年度は、海外調査が充実していたが、2017年度においては、荒川区の調査(参与観察、インタビュー調査)にも力を入れて実施する。東仁美(連携研究者)は、荒川区で小学校英語教育の調査に協力する。 (5)講演会及び国際ワークショップ(海外学術交流)。西安外国語大学の研究協力者を早稲田大学に招聘し、講演会を実施する(5月予定)。また2018年1月に海外研究協力者の北京師範大学・裴淼教授を招聘し、早稲田大学で国際ワークショップを開催する。日本側の研究者の他、この分野における若手研究者も発表を行い、若手研究者の育成を図る。 (6)国際シンポジウムなどで、研究成果を発表する。海南師範大学主催、全球共同利益理念下基礎教育課程与教学改革国際学術会議、2017年5月開催で発表予定(招待講演)。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度、研究代表者は、自分が所属する早稲田大学の特別研究期間制度を使用して、海外に滞在していた。主な滞在先は、香港・マレーシア・シンガポール(4月~5月)、イギリス(ロンドン大学、5月~8月)、中国(北京師範大学 8月、10月~11月)、台湾(中央研究院、11月~2017年3月)、以上である。 ①中国、台湾で海外調査(小学校での参与観察、アンケート、インタビュー調査)を実施した。しかし、特別研究期間制度によって宿泊費が支給されたため、科研費を利用する必要がなかった。②国外に滞在していたため、資料整理などの補助作業のための謝礼が必要とはならなかった。③海外調査で得られたネットワークを活用し、かつ研究成果を広く周知するため、2017年度、早稲田大学で国際ワークショップを開催する。そのための補助費を、次年度に繰り越したいと考えた。 以上の、3つの理由から、次年度使用額が生じることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
①国際ワークショップを、2018年1月に早稲田大学で開催予定である。海外からゲストとして、小学校英語教育の専門家である裴淼教授(北京師範大学教育学部)を招聘予定である。合わせて日本側研究者も発表を行う。また、このテーマに関心を持つ大学院生や若手研究者にも研究発表も行う機会を提供し、若手研究者の育成に努める。ワークショップの開催にあたっては、報告書を作成し、関係各機関に配布する。また、早稲田大学のリポジトリにも登録予定である。招聘費用の一部として充当する。 ②2017年5月に海外研究協力者(西安外国語大学・遅延平教授、延安幼稚園関係者)を招聘して、早稲田大学で一般公開の研究交流会を開催予定である。研究交流会の諸費用として、充当する予定である。
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