研究課題/領域番号 |
16K04629
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
沖 清豪 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70267433)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 入学者選抜 / 機会の公正性 / 英国 / 国際比較 |
研究実績の概要 |
日英の入学者選抜制度の比較研究である本研究課題は、2020年度に日本国内の改革に関する議論の整理を行い、秋の日本教育行政学会において政策転換をめぐる課題を検討する報告を行った。本報告では、特に審議会における入学者選抜をめぐる公平性に関する議論において、理想論と現実の課題との相克を十分検討しないまま、報告書がまとめられており、日本における入学者選抜改革の迷走の一端であることを指摘した。 また別途公平なアクセス(fair access)の可能性について英国内の議論を確認し、GCE A-level試験の結果に基づく大学進学以外のルートとして、①成人受験生に対する特別な試験、②資格枠組みによるTariffを利用しA level試験以外の学術資格・試験(GCSE試験やIB試験など)の成績による大学進学、③Tariffを利用し職業資格取得とその経験に基づいた大学進学ルートの拡大、および④状況に基づいた入学者選抜(contextual admission)への注目、が進んでいることを確認した。一方で、英国大学の伝統である24歳以上の成人の大学進学率が逓減傾向にあり、機会の公平性だけではなく、大学進学の目的の変化や経済状況なども検討すべき課題となった。 一方、新型コロナの影響で日本だけでなく英国の大学入学者選抜もまた、大幅な変更を強いられた。特に2020年春のGCE-Aレベル試験が中止され、それまでの学校内での教員による評価に基づいて算出される数値での合否判定が進められることで混乱が生じている。2021年度に向けて本課題を継続して調査し、課題を整理することにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度想定した学会発表やそのための準備は、新型コロナの拡大を通じて修正を迫られるとともに、新たな課題が立ち上がることとなり、特に英国における入学者選抜をめぐる課題の整理が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に採択された研究課題が、より広範な高等教育への機会の拡大とその公正・公平性に関するものであるので、それにつながるように情報収集と課題の整理を進めることとしたい。また、2021年秋の学会において、その成果を報告することとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は学会報告を複数回実施する予定であったが、新型コロナの影響で自由研究発表が実施されない学会が生じたこと、実施された教育行政学会もオンライン開催で旅費が不要となったこと、および英国における入学者選抜制度が新型コロナの影響で大きく変動しており、本研究課題としてさらに動向を把握する必要に迫られたことによる。従って、2021年度については、助成金を学会が対面で行われる場合の旅費、および英国の入学者選抜動向に関する文献購入等に充当することとしたい。
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