研究課題/領域番号 |
16K04636
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
大森 弘子 佛教大学, 社会福祉学部, 非常勤講師 (90445974)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 保育士の専門性 / キャリア・パス |
研究実績の概要 |
地域社会が希薄化し、児童虐待相談件数が増え続ける今、全ての子どもが人生の最初に良質な保育を受けることが求められている。その子どもを保育する保育士自らも将来像を描き、子どもの保育に従事できることが必要不可欠である。保育士が、自らの専門性を向上させる道筋が必要であると考える。そこで本研究では、保育士が、初心者、新人、一人前、中堅、達人へと成長するに至る「保育士の専門性獲得のプロセス」を解明する。 その第1段階として、まず、平成28年度は、保育士が働く児童福祉施設(保育所、乳児院、児童養護施設、児童相談所、児童発達支援施設、児童館、母子生活支援施設)での現地調査を行った。児童福祉施設での保育士からの聞き取り調査から、保育士自身の職位、勤続年数、保育士の専門性と魅力(やりがい)、職場満足度等について回答を得た。その結果、保育士が実感ある成功体験を持つための結果はすぐに可視化できず、保育士が他の保育士を十分に観察して見習う機会も少ないことが分かった。また、保育士に求める役割期待について、保護者への面接調査も行った。その結果、保育士が地域社会で築いていく社会的役割を、保護者は十分理解していない可能性が示唆された。 次に、質問紙法によるデータから、保護者305名を抽出した。分析には最新の統計ソフトSPSS Statistics 24.0Jを用い、「保育士の専門性」へ求める役割期待の可視化を一部試みた。 さらに、保育士の専門性とキャリア・パスについて書かれている文献(書籍・論文・雑誌記事等)を過去5年にさかのぼって調査した。具体的に、国内における先行研究は、国立国会図書館のNDL-OPACを使用し、保育・幼児教育分野の学術雑誌に掲載された論文から検索した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、アメリカでの調査を計画していたが、面接の予定が合わなかった。計画通りに進まないため、日本に来日した保育士等から面接調査を行った。 また、面接にSNSを導入することで、アメリカの保育士の面接を行い、妥当性のある結果が得られると考える。 さらに、研究計画に対する進捗状況と評価の確認を第三者から繰り返し受け、分析方法の修正を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
保育者の専門性については,未だ標準化されたものはない。看護の領域では,看護師の5段階モデル「初心者から熟練者へのエキスパートモデル(Benner,1984)」の概念が提示されて以来、アメリカではキャリア・パスの標準化を図り、看護師の標準的なレベルが高まった実践的論証がある(Benner,2015)。一方、全国保育士会(2012)がキャリア・パスを作成したが、標準化された研修制度や研究はほとんど見当たらない。 そこで、今年度は、まず、保育士の専門性を活性化させるキャリア・パスの先行研究(大森, 2013;2014)を発展させる。保育士が初心者、新人、一人前、中堅、達人へと成長するに至る「保育士の専門性獲得のプロセス」を理論的に解明する。 次に、個人面接法(半構造化面接)による調査を行う。初心者、新人、一人前、中堅、達人レベルの現職保育士は保育士の専門性をどのように考えているのか、また、子どものメタ認知能力を育むための保育士の視点を中心に語ってもらい、面接中の会話は被面接者の許可を得た上で全てICレコーダーに記録する。その後、質的分析を進め、研究の加速化を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
面接が予定通り進まなかったため、当該助成金が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に面接を加速し、当該助成金は、次年度の面接にかかる使用を計画する。
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