本研究の目的は、日本の教師の仕事の特徴をゲートキーピングという観点からとらえなおすことである。近年学校ではSCやSSWなど、教師以外の専門職の配置が進んできており、そのような状況のなか、これまでの教師役割(あらゆる役割を自らの職務として献身的に引き受ける)が変化する可能性が指摘されている。先行研究によれば、他職種が非常勤配置の場合、教師は「ゲートキーピング」役割―どのような問題をとりあげ、他専門職にどのような職務を振り分けるかを決定する役割―を新たに担うようになっている。では、常勤配置の場合はどうだろうか。本研究では、多職種の常勤配置を行っている先進的な自治体に着目し、教師文化の変化およびゲートキーピングの様相をとらえようとした。 1年延長した4年目となる本年度は、まず、調査協力自治体への調査結果報告パンフレットの作成を優先的に行った。1年目・2年目の成果をまとめ、教員の仕事に余裕ができる協働のための提言を行った。8月に1500部作成し、自治体内の各学校にも配布した。9月には、日本教育社会学会大会で2年目に行った量的調査の分析結果の報告も行った。常勤で専門職を配置し、協働が進むことにより、教員の意識は専門化や限定化の方向には向かっていないこと、「うちの職員」意識がアンビバレントに働いている可能性を示唆した。また、9月・10月には追加で量的調査を行った。2年目の量的調査より対象教員数を増やし、教員だけでなくほかの職種にも同様の内容で調査を行った。その後、年度末にかけて校務等が多忙となり、論文にまとめることはできなかったが、任期切れに伴い退職となったので、2020年6月現在、ようやく以前投稿した論文のリライトや、学会報告をまとめた論文の作成を進めている。補助事業期間は終了しているが、今後も2019年度の調査結果をパンフレットや論文にまとめる予定である。
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