研究課題
本研究の目的は、学校統廃合における〈京都方式〉と呼ばれる理念/方法について、統廃合対象地域の中に多様に存在すると考えられる地域の固有性が、地域間、および行政との相互交渉過程でいかに対応されたのかに着目して検証することであった。多様である「地域」の固有性とは、位相の異なる「地域」に存在する学区の固有性ということである。各学区の歴史や共有された意識は、各学区ならではのものを指す。番組小学校の伝統を引く学区では、学校は地域のアイデンティティの核にもなる。それに対して、地域の多様性という場合の地域は、京都市全体を見た場合、中心部にあたる伝統的な地域や周辺の新興地域もあれば、中山間部やニュータウンもある、被差別部落や在日コリアンなど社会的マイノリティが多く住む地域もある。したがって、学校統合は、各学区の固有性を揺るがしかねないものであるが、それがどの学区においても同じように顕現するわけではない。学区の成り立ちや統合の時期、統合相手校がどこになるのかなどによって異なることを、本研究は6校の調査を通して明らかにした。〈京都方式〉とは、地元(「地域」)が自主的に話し合いを進め地元の要望をもって統合に至るというものである。行政の役割は、地元の話しあいを円滑に進めるために必要なデータや資料、解決事例の提示に留まる。すなわち〈京都方式〉は、ボトムアップを手法とすると言っていい。確かに学校統合に際しては、市教委が前面には出ず、地元の要望を待って行われた。しかし、そのためには市教委が黒子のように必要なタイミングを計っていた。だからといって、市教委がすべてシナリオを書いてその通りに動かしたというのではない。地元からの自生的な動きの有無や市教委の関与の仕方は一律ではなく、いわば統合の数だけ異なったあらすじがあったのである。この「変幻自在」ぶりが〈京都方式〉の肝である。
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日本建築学会大会学術講演梗概集
巻: 2019 ページ: 161,162
巻: 2019 ページ: 163,164