研究課題/領域番号 |
16K04643
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研究機関 | 就実短期大学 |
研究代表者 |
笹倉 千佳弘 就実短期大学, 幼児教育学科, 教授 (60455045)
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研究分担者 |
井上 寿美 大阪大谷大学, 教育学部, 准教授 (40412126)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 行き来 / 困難な生活状況 / 居場所 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、貧困や虐待等の社会経済的要因によって学校に行っていない小学生のエンパワメントを実現するため、地域社会において求められる支援ネットワークモデルを構築することである。2017年度の研究実績は、大きく、2つに分かれる。
1.公立の小学校教員4人に、貧困や虐待等の社会経済的要因によって学校と家庭間の「行き来」に支障が生じている子ども、あるいは、貧困や虐待等の社会経済的要因によって学校と家庭間の行き来に支障が生じる可能性のある子どもについて、家庭生活の状況や学校生活の状況に関する聞き取り調査を実施したところ、困難な家庭状況にある小学生が、学校と家庭間を行き来することを阻害/促進する要因に関して、次の3点が明らかになった。1点、困難な家庭状況にあるというだけでは、学校と家庭間の行き来を阻害する要因になるわけではない。2点、担任を始めとし、教員間で困難な家庭状況に関する情報が共有されるだけでは、学校と家庭間の行き来を促進する要因になるわけではない。3点、困難な家庭状況にあっても、周りの子どもとの比較的安定した関係や、自分のことを話せるような担任との関係は、学校と家庭間の行き来を促進する要因となり得る。
2.困難な家庭状況にある小学生が,学校と家庭間を「行き来」するにあたり、かれらが学校や学級を居場所と認識するようになる「きっかけ」が、いかなる意味世界として経験されるのかを把握するためには、エピソードを用いた研究が有効であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「困難な生活状況にあっても不登校になっていない子どもの居場所を明らかにし、関係者への聞き取り調査、及び、参与観察を実施する」という課題が、十分、達成できなかったからである。
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今後の研究の推進方策 |
いわゆる不登校経験のある小学生、あるいは、小学校時代に不登校の経験のあるおとなに聞き取り調査をおこない、いかなる働きが、不登校状況にある小学生の学校と家庭間の「行き来」を可能にするのか、かれらによって認識されている、暮らしの場における心的なエネルギーの補完関係に注目して明らかにする。 また、困難な生活状況にある小学生のエンパワメントを実現するために、支援ネットワークが一定、機能している地域社会のフィールドワークを継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
キーワードである「不登校」という言葉に代えて、学校と家庭間の「行き来」という言葉を採用したことにより趣意書作成が遅れ、結果として、当初の予定よりも聞き取り調査回数が減ったからである。 行き来に関する聞き取り調査に加えて、困難な生活状況にある小学生のエンパワメントを実現するために、支援ネットワークが一定、機能している地域社会のフィールドワークを継続する。
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