本研究の目的は、「不登校」児童の家庭と学校間における「行き来」駆動の促進要因と抑制要因を、家庭から外に出るときと外から学校に入るときに注目して明らかにすることである。公立小学校教員7人に半構造化インタビューを実施し、入手した資料を分析した結果、家庭から外に出るときの「行き来」駆動促進要因は、「地域の人から気にかけられる」と「学校関係者から気にかけられる」であり、抑制要因は、「家庭の養育環境が不十分である」「家族と地域住民との関係が良好でない」「学校に行かないことが家庭内の居心地の悪さにつながらない」であることが明らかになった。 また外から学校に入るときの「行き来」駆動促進要因は、「学校関係者から気にかけられる」「子どもの主体性が大切にされる」「過去にとらわれず新たな関係を築く」であり、抑制要因は、「集団生活に馴染みにくい」「障害等による発達上の特性がある」「教員の指導が十分に行き届いていない」であることが明らかになった。 上記6つの抑制要因を検討したところ、子どもが家庭と学校間を行き来できるようになるには、子どもにとって、家庭や学級が、「安心できる集団」「開かれた集団」「インクルーシブな集団」となっている必要があると考察された。 また、「子どもの主体が大切にされる」と「過去にとらわれず新たな関係を築く」という促進要因は、固定的な教育関係に「ゆらぎ」を生じさせていると考察された。さらに、「地域の人から気にかけられる」と「学校関係者から気にかけられる」という促進要因を加えて検討したところ、家庭と学校間の「行き来」を可能にするには、子どもの主体性を大切にし、過去にとらわれず、新たな関係を築くという個人に対する手立ての方向性と、安心できる集団、開かれた集団、あるいはインクルーシブな集団づくりをめざすという集団に対する手立ての方向性があると考察された。
|