本研究はノンフォーマル教育としての就学前教育プログラムへの参加が、その後の初等教育入学・修了や前期中等教育進学等にどのような長期的効果をもたらすのかを実証的に明らかにすることを目的とする。具体的には、2008~09年にカンボジアA州農村部のコミュニティ・プレスクールに参加した幼児141名と公立幼稚園就学の幼児104名、いずれの就学前教育にも不参加の81名から成る計326名の子どもの追跡調査を行うものである。 今年度は、これまでの調査で2003年生まれであることが再確認された256名のみを対象に分析を行った。主な結果として、家庭の要因を統制した上で、就学前教育就学は学齢での小学校入学促進に効果があった。特に、コミュニティ・プレスクールの場合は、運営タイプに関わらず、通学距離の影響を除いた上でも学齢での小学校入学を促す効果が見られた。また、修学年数では、コミュニティ参画を促し、栄養衛生面の支援も行うコミュニティ・プレスクールのタイプが、家庭の要因を統制した上で、年数増加の長期的効果のあることが判明した。一方で、先進国での知見とは異なり、いずれの就学前教育も小・中学校の留年・中退の効果は確認されず、保護者の教育年数や子どもの性別が影響を与えていた。小学校修了や中学校進学でも、6歳時点の就学レディネス水準に促進効果があったが、就学前教育就学自体に効果はなく、家庭の要因等が強い影響を与えていた。学会発表としては、2018年5月に国際学会で、同年6月と9月に国内学会で発表を行った。また、同年11月にはカンボジア教育省と所属先との合同セミナーでの研究発表と意見交換を図った。2019年4月の国際学会発表ではフルペーパーも提出し、現在は投稿に向けて準備中である。同年12月にはカンボジアを再訪し、中退者61名を除いた195名の第2次追跡調査を実施した。その結果は2019年6月に学会発表を行う。
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