研究課題/領域番号 |
16K04652
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
谷口 和也 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (60281945)
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研究分担者 |
蓮見 二郎 九州大学, 法学研究院, 准教授 (40532437)
水山 光春 京都教育大学, 教育学部, 教授 (80303923)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 多文化共生 / シティズンシップ / 宗教的多様性 |
研究実績の概要 |
本年度は「多文化共生社会における政治的リテラシーと社会的責任についての基礎的研究」というテーマについて、理論的な研究とともにイギリスにおける多文化共生化が進んだ学区でのシティズンシップ教育の実情を調査する予定であった。 前者の理論的な研究については、①日本公民教育学会で「政治的リテラシーと道徳性―英国シティズンシップ教育が抱える問題―」と題して発表。イギリスのシティズンシップ教育の基盤に保革ともに「キリスト教的な基盤」が存在し、それが一種の民主的対話の基盤として働いているのではないかということを論じた。さらに②日本グローバル教育学会では「グローバル社会における民主的対話の基盤―グローバルな問題を判断・評価する二つの指標―」と題して、「キリスト教的な基盤」を用いずに多文化共生社会での民主的な対話が成立可能かを理論的に追究した。 また、文化の違いが社会形成の意識の差にどのようなちがいをもたらすのかを、日本の高校生50名とモンゴルの高校生50名を対象に調査し、いくつかの違いが見られた。この分析結果については、現在、投稿中である。 しかしながら後者は、訪問予定の学校からの許可が得られず、大幅な遅れをとった。今年度の予定では、パキスタン住民の多いブラッドフォードなどの学校で何を基盤にシティズンシップ教育が行われているのかを聞き取り調査する予定であったが、9月実施の予定が次年度変更となり、この部分に関する研究が滞った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の二つの大きな柱のうち、理論的な研究はほぼ予定通り進み、全国学会発表2件、国際学会での発表1件をすませた。 調査研究は訪問予定の学校からの許可が得られず、大幅な遅れをとった。今年度の予定では、パキスタン住民の多いブラッドフォードなどの学校で何を基盤にシティズンシップ教育が行われているのかを聞き取り調査する予定であったが、9月実施の予定が次年度変更となり、この部分に関する研究が滞った。これについては、外国調査の予算を基金化して次年度の調査費用にまわすとともに、現在、研究分担者らとともに再交渉にあたっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針としては、次の三つの柱を考えている。 第一に、平成28年度できなかった多文化共生化が進んだ地域のシティズンシップ教育が何を基盤として教えられ、基底となる価値観の違いを実践現場ではどのような考えで共有化をはかり、また、シティズンシップ教育の到達目標を何に置いていくかを明らかにする。 第二に、先に考察した「キリスト教基盤」の民主的対話以外の基底として「持続可能性」や「安全」「生存」などを提案したが、実際に多文化化した社会で、それらの基底に基づく多文化間の政治的意思決定が可能かどうか。アクティビティの開発と実施を通じて実証的に検討する。 第三に、これらの理論やアクティビティを組み込んだ系統的な政治的リテラシー育成のカリキュラムの開発と実施を考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、繰越金が出た大きな理由が、交渉中であったイギリスの学区への調査が不調に終わった点である。理論研究と同時に大きな柱のひとつであったイギリスにおいて多文化化が進んだ学区においてシティズンシップ教育がどのような基盤を基に教えられているかという点を解明する調査研究が、先方の事情で変更となった点である。そして、これに伴う研究発表1件を行うことができなかった。 この点は平成29年度に予定、基金ともに繰り越し実施する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
実施計画としては、平成29年度の9月及び平成30年2月をめどに、イギリスのブラッドフォード市およびロンドンを訪問し、多文化化した社会におけるシティズンシップ教育の進め方についての実態調査を行うとともに、ロンドン大学(UCL IoE)に蓄積されているシティズンシップ教育導入関係の資料を収集する予定である。 この調査結果については、平成30年2月の社会系教科教育学会および平成30年6月に予定されている日本公民教育学会で発表する予定である。
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