研究課題/領域番号 |
16K04652
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
谷口 和也 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (60281945)
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研究分担者 |
蓮見 二郎 九州大学, 法学研究院, 准教授 (40532437)
水山 光春 京都教育大学, 教育学部, 教授 (80303923)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シティズンシップ教育 / 多文化共生 / アイデンティティ |
研究実績の概要 |
今年度の研究実績は次の二点に絞られる。 第一は、研究目的である多文化共生社会における政治的リテラシーと社会的責任について明らかにするために、調査対象を絞って研究を進めてきた。ひとつは日本国内の在日外国人学校(調査対象との関係で詳細は伏せる)で母国と日本育ちの二重のアイデンティティを形成してきた子ども達や保護者を対象とした調査。第二に、南京外国語学院で、本国の高考を考慮せずカナダの大学への留学を前提とした教育を行っている(中国に残らないことを前提にしている)公立高校について、南京師範大学の教員との共同で調査を進めてきた。第三は、イギリスのムスリムの多い地域の中学校を調査した。このように本国ではなく外国にアイデンティティを持つ学校で、どのように子ども達がシティズンシップ観を形成し、また、どのように政治教育を行っているかの調査に取り掛かった。 第二に、新教科「公共」の導入を前に、日本の高等学校(や中学校)で行う道徳教育の実践を開発し、日本の子どものシティズンシップ観について調査した。具体的には、多文化共生社会を前提とした道徳教育についての実践を開発し、「国民」としての枠組みをフリーにした場合、子ども達がどこまでを「自分たちの仲間」と感じるか、多文化共生社会における「包括性」の範囲を議論するような授業を行った。日本の中高生については個人差の方が大きかったが、日本人の大学生と留学生で調査した場合、国によって「同国人」と感じる感じ方に差異が見られた。最終年度は、この点についても調査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度後半から2017年前半まで研究代表者が体調を崩したことから、2016年度の研究進捗状況は遅れがちであったが、特に海外の調査研究について、当該国の研究者との協働が進み(現地に行くことができなくても)調査研究が予定通り進捗したことが大きい。 また、国内の在日外国人学校との信頼関係がようやく実って、デリケートな質問について意見交換ができるようになったことも調査研究の進捗に寄与した。 さらに学校現場に関しては、道徳教育の実践研究が必要とされていることもあり、社会科や公民科ではなく、道徳教育のカテゴリーで数多くの授業実践をさせていただく道が開けたことが大きい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方針としては以下の三つに絞って行う予定である。 第一に、これまで協働して調査研究を行ってきた中国及びイギリスに調査研究に行くこと。これに加え、本国にあって平均以上の所得をもって指定をインターナショナルスクールに通わせている場合、どのようなシティズンシップ教育を求めているのかを明らかにするため、南京外国人学校に加えてモンゴルのインターナショナル校を調査する。 第二に、これまでの調査研究の成果を発表していくこと。前記の事情で2016年度後半~2017年度前半の研究に遅れが出たため、成果の発表は最終年度にずれ込んだ。そのため、学会発表よりもむしろ論文執筆に重点を置いて、成果の刊行を行ていく。 第三に授業実践に関しては、前記のように前記のように国ごとの「包括性」の違いについての調査は行うが、より重点を置くために2017年度の「アイデンティティ」形成ではなく、「政治的リテラシー」に重点を置いた授業開発および実践を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度後半~2017年度前半、研究代表者が体調を崩し、特に海外調査を中心に予算執行ができなかったため。しかしながら、イギリスの複数の中学校、南京の南京外国語学院、モンゴルのインターナショナルスクールなど、海外の研究者の協力を得て具体的な予備調査が進んでおり、実地調査を最終年度に実行する見通しが立っている。 また最終年度は、成果発表を中心に行うため、その点での予算執行の計画も立ててある。
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