研究課題/領域番号 |
16K04653
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
小畑 千尋 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (20364698)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 音痴克服 / 中学生 / 自己肯定感 / 歌唱指導 / 内的フィードバック |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、歌唱における生徒自身の内的フィードバック能力向上と生徒の心理面に着目して、中学生の自己肯定感向上に繋がる音痴克服のための歌唱指導法に関する実証的研究を行うことである。 研究初年度にあたる平成28年度はまず、中学校2校でのフィールド調査、予備調査を経て、宮城県のA中学校全校生徒318名(1学年103名、2学年124名、3学年91名)を対象に、生徒の内的フィードバック能力を含む歌唱技能に関する個別調査と音痴意識に関する質問紙調査を実施した。個別の歌唱調査は、小学校での同縦断的調査での方法(Obata 2013)を用い、音痴意識に関する質問紙調査については、本申請者が開発した音痴意識を問う質問紙調査(Obata 2003, 2012)を基に作成した。現在、これらの調査結果について詳細な分析を行っている。 また、2000年と2013年に筆者が実施した小学校教員養成課程に在籍する大学生に行った音痴意識の質問紙調査の結果を比較し、国際シンポジウム(The 32nd ISME World Conference)において発表を行った。調査結果の分析から、「音痴」意識を持つ学生の割合を含む多くの項目において、2000年と2013年の結果と比較して有意差がみとめられなかったことは極めて興味深く、その結果について海外の研究者と活発な意見交換を行った。 さらに、これまでの児童・生徒を対象とした音痴克服の研究成果の一部を、小・中学校での歌唱指導で教員が活用できる一般書としてまとめた(小畑 2017)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初は、中学校全学年の各1学級、計3学級(約100名)において、生徒の内的フィードバック能力を含む歌唱技能に関する個別調査及び音痴意識に関する質問紙調査を行う予定であったが、研究協力校A中学校の協力により、全校生徒約300名を対象に調査を実施することができた。また、2000年と2013年に実施した大学生の音痴意識に関する調査結果を比較し、国際学会で発表した。 以上より、本研究がおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度A中学校で実施した質問紙調査結果の分析から、いくつかの項目において学年ごとの傾向がみられる。この結果がA中学校特有の結果であるのか、他の中学校でもみられる傾向なのかを明らかにするため、平成29年度は、研究協力校B中学校において、それぞれ全学年の各1学級、計3学級(約100名)を対象にA中学校と同様の歌唱技能に関する個別調査及び音痴意識に関する質問紙調査を実施する。また、発達的特徴を明らかにするため、C小学校の5・6年生にも上記の調査を行う。 さらに、上記の結果と筆者が開発した内的フィードバック向上のための指導法(小畑 2005)を基に、中学生を対象とした指導モデルを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会参加のための海外渡航費(航空券)が、概算よりも安価であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度実施したA中学校における音痴意識に関する質問紙調査では、いくつかの項目において学年ごとの傾向がみられたことが非常に興味深い。この調査結果について、より精緻な検証を行うため、当初の予定にはなかったが、他の中学校においても同様の質問紙調査を実施する必要がある。平成28年度に生じた次年度使用額は、この質問紙調査の実施と分析のための費用に充当する。
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