研究課題/領域番号 |
16K04655
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
川村 教一 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (80572768)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 理科教育 / 地学教育 / 海洋掘削 / 中等教育 / 微化石 |
研究実績の概要 |
海洋地質学の基礎的な概念として中学生の海洋大地形・地殻構成物質に関する認識調査をアンケート調査法により行った.太平洋西部(東北地方~ハワイ諸島)を例としたこの結果では、大地形については誤った概念が大半であり、正しい海底地形を答えることが一般的にできなかった.また、海底地質については小学校で学習した内容を組み合わせた模式にとどまっており、海洋プレートの学習を始める以前に、海洋の大地形や遠洋性の堆積物について学習しないと海洋プレートの概念が習得しにくい可能性が示唆された. 海洋地質学の教材とするために、高知県において野外調査を実施し、海洋地殻構成岩石を入手し、岩石の種類や組織の観察教材の素材を用意した.また、研究協力者(徳島大学 石田啓祐教授および島根大学 辻本 彰講師)から、チャートとそこから抽出した放散虫化石、および遠洋性堆積物中の微化石(有孔虫と放散虫)について標本を入手した.これらについて海洋地質学教材としての適切性を検討した.その結果を踏まえ、中学生を対象とした海洋地質学の授業の試行を行い、生徒の反応についてのデータ取得を行った. また、各種海洋掘削で得られた岩石(枕状溶岩、斑糲岩、チムニー)を用いた中学生・高校生向け地球科学授業の参与観察を行い、生徒らの岩石標本観察に対する反応についてデータを収集した.その結果から、海洋地殻を構成する火成岩を生徒に観察させることは、海洋プレートの概念構成に役立つ可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中学生の海洋地形・地殻に関する認識調査を行った.これは教材開発にあたり必要なデータである.海洋地殻構成岩石が分布する地域において野外調査を行い、教材用標本の採取を実施した.この標本をもとに顕微鏡用観察資料を作成し、教材作成が行えた.研究への協力者から遠洋性堆積物中の微化石(有孔虫と放散虫)について標本提供を受けることができた.この標本をもとに、中学生を対象とした海洋地質学の基礎の授業の試行を行えた.海洋掘削で得られた岩石を用いた中学生・高校生向け授業の参与観察を行い、生徒らの反応についてデータを収集できた.
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今後の研究の推進方策 |
中学生の海洋地形・地殻に関する認識の分析と考察の精緻化を行う. 作成した海洋地殻構成岩石の顕微鏡観察用教材を用いた授業を試行し、生徒の反応についてのデータを得る.さらに、遠洋性堆積物中の微化石(有孔虫と放散虫)を用いた授業の試行を継続しデータの蓄積を行う.海洋掘削で得られた岩石を用いた中学生・高校生向け授業をさらに試行し、生徒らの反応についてデータを追加して収集する. これらの授業のおいて有効だと考えられた海洋地質学教材について、論文や学会で成果と課題を公表するとともに、中等教育学校教員向けに普及する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は予定していなかった他の外部資金を得ることができたので、本研究に関して効率的に研究することができ、科研費による支出が押さえられたため次年度使用額が生じた.
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