研究実績の概要 |
本研究の目的は、互恵的教授(Reciprocal Teaching; 以下、RT)を大学教養英語の授業に組み込む指導法を開発し、その効果を検討することである。RTは、アメリカの読解力が乏しい7年生(日本の中学1、2年生相当)が母語で書かれたテキストを「質問・明確化・要約・予測」という4つの読解ストラテジーを用いて、グループディスカッションを通して読みを深めていく教授・学習方法である (Palincsar & Brown , 1984) 。先行研究は、RTによって学習者のテキストの理解が著しく改善されたことを示している(Palincsar, 2003; Nation, 2009)。RTは、外国語の読解授業においても効果が期待されているものの(Grabe, 2009)、実証研究が少ない。参加者は地方国立大学の教養英語を受講している1年生である。平成28年度は3クラスを対象にRTの「要約」と「質問」を作成する活動を、平成29年度は2クラスを対象にRTの「明確化」を行う活動を重点的に授業に組み込んだ。このうち、「質問」と「明確化」を組み込んだ授業には成果が見られた。「質問」の活動は、学習者に対して (1) 全体ストラテジーを働かせる読みの促進、(2) 自己効力感の向上、(3) 学習意欲の向上、(4) 学習不安の軽減という効果をもたらした。「明確化」の活動は,学習者に対して (1) 話し合いにより自分の理解の曖昧さに気づく、(2) 他者の発話により語彙理解が促進される、(3) 語彙記憶が保持されるという効果をもたらした。RTの「質問」と「明確化」は、大学教養英語の授業に組み込むことにより、協同学習の利点に加えて、全体ストラテジーを活用した英文読解や付随的語彙学習による語彙記憶の保持という効果が期待できる。
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