本年度は,これまで情報科学と情報技術の観点に基づいて検討してきた評価基準を用いて,指導者の育成,評価基準に則した指導内容について検討した。当初予定では,昨年度小学校,本年度中学校での実践を想定していたが,指導する教員の実態の把握と評価基準の観点に則したカリキュラムの検討が急務と考え,そちらを中心に研究を行った。まず,指導する教員の実態では,小・中・高等学校教員を対象とした教員研修(対象48名)の結果を評価基準から分析した。その結果,順次処理では変数や値と演算の関係や代入式,分岐処理では条件設定の指導の重要性,反復処理では繰り返すための条件設定に関する考え方十分にできていないことが分かった。この成果は宇都宮大学教育学部教育実践紀要第4号(2018.2.28)に掲載した。また,この結果を受けて教員研修プログラムを宇都宮市教育委員会と開発・実践した。その成果については現在分析中である。 さらに,教員の実態に応じたプログラミング教育のカリキュラムについても検討した。検討したカリキュラムは,評価基準の観点を踏まえ,プログラミング教育に不慣れな教員でも指導することのできるものとした。また,そのカリキュラムを実施するために必要なプログラミング教材の開発も行った。開発したカリキュラムは,小学校第2学年音楽科と小学校第4学年社会科の授業で授業実践をし,その成果を宇都宮大学教育学部実践紀要に投稿した(現在,投稿中)。また,小学校第5,6学年の各教科の教科書や教育課程から指導単元を分析し,「思考・判断・表現等」をねらいとした授業を抽出した。そして,抽出した授業をプログラミング的思考力の育成を含めた授業案と教材を提案した。その結果は,日本産業技術教育学会第34回情報分科会(宇都宮)にて発表した。現在は,これらの実践や提案を合わせて1つの研究成果としてまとめている段階である。
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