本研究は、新聞やチラシ・ポスターなど、日常生活の中に存在している「多様な言語材」の国語科指導における学習材としての価値を積極的に認め、それを活かした国語科指導モデルのあり方を究明することを目的としている。最終年度である今年度は、これまで行ってきたことを改めて検証し、「多様な言語材」を作ることを活動の中心に据えた授業を展開するにあたってのポイントを整理し、報告書を作成するとともに、それをふまえたワークショップを実施してその有用性の検討を行った。 これまでの研究では、先行実践に対する問題点をふまえつつ、大学生を対象とした試行活動にもとづき、すでに学習者の身の回りに存在する言語材における言葉そのものに対する省察を確かなものにすることを出発点とし、ただ単に作るだけの活動にならないようにするために、制作する言語材に対して目的意識や相手意識などをずらして内容にアレンジを加えることを意識し、それらを組み込んだ指導モデルの提唱を行った。 最終年度のまとめの研究では、構築した指導モデルについて、おこなった実践・活動の内容に基づいてあらためて再検討を行ったが、アレンジを加えた言語材に基づいて行われる交流活動(たとえば「レストランのメニュー」という言語材に盛り込まれる内容を「料理」ではなく「本」にアレンジして「本のメニュー」を作成し「本のレストランを作る」という活動など)は、新たな言語環境を作り出していくことにつながる点を指摘した。本研究の成果は、学習者個人の言語活動レベルに留まらない、それぞれの言語活動の複合体である動的な言語環境の整備へとつながるものとして研究をまとめた。
|