研究課題/領域番号 |
16K04675
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
佐藤 寛之 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (30452832)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 理科学習 / メタ認知 / 受容すべき情報 / 情報の質的価値 / 科学的な思考・表現 |
研究実績の概要 |
本研究では、子どもが理科学習において自然事象の理解・解釈や問題解決を図る際に必要となる子どもの考え(「受容すべき情報」とその判断に用いた「情報の質的価値」)を、子どもの考えが表出し易く検証し易い学習単元での授業実践を通してデータ収集し、分析を試みている。 平成28年度は、本研究の初年度となるため、メタ認知を促す授業方略に関する研究動向・成果の精査と研究データの収集に最適な理科授業について単元や内容等から検討した。また、先行研究で実践を試みた認識論的Vee地図を初発にして、メタ認知的モニタリングとメタ認知的コントロールを顕在化・自覚化させて方略を再検討し、学習の導入場面の子どもの考えを把握するための理科授業を実践した。具体的な研究実績の概要は、以下の通りである。 1.理科教授・学習論におけるメタ認知に関する先行研究の研究成果を精査から、研究データの収集に最適な理科授業デザイン案作成のために必要となる要素を精査した。 2.小学校理科の「ものの体積と温度」単元における学習の導入場面で、子ども自身が学習プロセスを顕在化・自覚化させることを目的として、認識論的Vee地図をベースにしたワークシートを活用した理科授業デザイン案の作成した。 3.上記2.で考案した授業デザイン案に基づく授業を研究協力者が実践しデータを収集した。 その結果、導入場面での学習問題に対する予想を考える場面では、子どもが「受容すべき情報」を想起できなかったり、無自覚的や断片的に捉えていたりすることが改めて示された。小学生が「情報の質的価値」を吟味するためには、既有知識や生活経験を引き出したり関連付けたりする教師の支援だけでなく、他者との対話や考えの交流を通じた、それぞれの考えの差異の理解を促す学習活動が肝要であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に実施を予定していた研究内容は、メタ認知を促す授業方略に関する研究動向・成果の精査、研究データの収集に最適な理科授業について単元や内容等の検討、先行研究で実践を試みた認識論的Vee地図をベースにしたメタ認知的モニタリングとメタ認知的コントロールを顕在化・自覚化させて方略を再検討と学習の導入場面での子どもの考えを把握するための理科授業実践であった。 これらのうち、先行研究により得られた研究成果に関しては、口頭発表や論文等により公表し、授業実践により得られたデータについては分析を進めているところである。データ分析を生かした授業の省察と具体的な改善点の導出という点においては、若干の遅れが生じたが、研究期間全体の進捗から鑑みて、現在の時点では問題は生じていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降は,理科授業の構成要素において子どもの考えが表出し易い「予想・仮説の立案」「観察・実験計画の立案」「考察とその共有」の各場面での子どもの考えを収集し,分析する。最終年度は,理科授業デザインに必要な要素とその有用性についても再検討し、研究を総括する。具体的には,以下の通りに研究を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ収集に必要な物品・消耗品の購入について、管理上の問題から授業実践を行う研究協力者が必要とする最小限の物品を購入することにしたため。データ収集やデータ分析の際に必要とされた謝金の支出が、今年度は必要とならなかったため。研究打合せや成果発表等に必要な旅費が当初予定よりも必要となることが予想されるので、必要な金額を算出し、次年度に旅費として支出することにしたため。 上記3点が、次年度使用額が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降のデータ収集に向けて,当初の計画に沿い、研究環境の整備に努める。購入を予定していた物品や消耗品については,精査したうえで購入し、打合せや研究発表における旅費を当初計画より増額したうえで,研究目的に合わせて執行する。
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