本研究では、子どもが理科学習において、自然事象の理解・解釈や問題解決を図る際に必要となる子どもの考え(「受容すべき情報」とその判断に用いた「情報の質的価値」)について、授業実践を通してデータを収集し分析を試みた。令和元年度は、前年度までの研究を継続して、先行研究の精査とメタ認知的活動の顕在化と気づきの自覚化を促すための理科の教授・学習方略に関する収集データの分析結果から、研究成果をまとめた。研究成果の概要は、以下の通りである。 1.導入場面での学習問題に対する予想を考える場面では、子どもが「受容すべき情報」を想起できなかったり、無自覚的や断片的に捉えていたりすることが改めて示された。小学生が「情報の質的価値」を吟味するためには、既有知識や生活経験を引き出したり関連付けたりする教師の支援だけでなく、他者との対話や考えの交流を通じた、それぞれの考えの差異の理解を促す学習活動が肝要である。 2.子どもが受容すべき情報の選択をする際には、まず、学習のキーワードに関連した生活経験を想起する。次に、生活経験と学習問題との関連の有無をふまえて、以前の学習により理解したことを生活経験に付け加え、子どもは自分なりの予想の根拠を補足していく。 3.思考過程もふまえて予想を交流することで,他者の考えとの相違点を深く理解したり、根拠の妥当性を批判的に検討したりする対話が生起する。学習中にも思考過程を顕在化させることで、実験結果は明確でも現象が生じた要因の確定までは難しい実験の考察段階でも、子どもが実験結果を基に自分の考えを更新させることができる。 4.考察を記述する際には、実験結果(現象)が生じた要因についての表現の「自由度」の高低が表現方法の差異となって現れる。そして、この表現の「自由度」は、子ども自身の解釈で説明可能か否かで決定されており、説明に対する確信により変化する。
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