第九次学習指導要領において求められる「言語力」の体系を解明し、育成にあたっての教育実践のスタンダードを小学校、中学校において構想することを目的としている。中でも、思考力、知的能力、方法知との関連を図る上で重要となる選択力、再出力の体系と系統、その行為化をどのような系統のもとにどのような学習指導を軸として具体化していくかを明らかにする。学習指導と評価方法のスタンダードについては、言語力の基本となる視写、書き抜き、書き込み、書き替えがどのような教科、領域でどのような段階を捉えて指導されているか、国内外の先進的実践を中心に検討する。 最終年度は、ヴァルドルフ・スクール調査(ミュンヘン)と、国内の研究協力者の授業実践の収集と記録を行った。前年度で明らかになった、①教師(集団)の創意による教材の選択が、学習者の選択力、再出力育成の根幹にあることを確認するとともに、加えて、②選択力、再出力を養成する上では小学校1~4年段階で見ること・文化的モデルを模倣すること、5~8年段階で問いを発見し、探究過程でさらなる問いを発見すること、9学年以降で自己の思索や生き方に関わる編集過程を担保することの重要性が明らかになった。さらに、国内外の先進的実践に共通していた指導として、①一人ひとりの学習者に個別の詩や本を選択して与える指導、②問いの探究過程を個別かつ螺旋的に支援する指導があった。選択力、再出力を育成する上では、指導者である教師(集団)が学習者の実態や発達段階に即しつつ、題材・学習材を選択してカリキュラム化していくこと、また、探究学習における個々の思索過程に適切な支援を与えていくことの重要性が改めて確認された。以上は、教科、領域を問わず共通する点であるが、一方で、教師の高い専門的知識・技能に裏付けられた支援が機を逃さず行われることがきわめて重要であることも確認された。
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