本研究においては,生涯にわたって安全で健康的な食生活を送るための自己管理力を育てる家庭科における食教育カリキュラムを開発することを目的とする。 自立した生活者を育てるためには,生活者一人ひとりが自分の生活課題を的確に捉え自分で課題を解決することができる自己管理力を育むことが重要となる。日常生活上の問題や課題を解決するためには,生活上の種々の制約の中で実現可能な意思決定をしていかなければならない。食品の選択・購入場面においては,多くの情報の中から,食品の選択・購入に必要な情報を選び,生産者,食品加工業者,販売者から伝えられる情報について適切に判断することが必要となる。 そこで,本年度においては,学生を対象に,食品購入行動に関する調査を行い,食品購入時における食品評価の視点や評価方法に関する知見を得ることとした。食品選択行動調査の結果から,居住形態,買い物頻度や料理頻度など食品と関わる機会,安全意識等の食への関心などが食品を適切に見分けることにつながっているとはいえず,また,食品に関する科学的知識についても,食品の品質を見分ける行動に直接関連しているとはいえなかった。これらの結果から,科学的な知識を伝えたり生活経験を増やしたりすることが,必ずしも食品の適切な購入行動に結びつかないことが示唆され,新たな学習方法を導入することの必要性が認められた。こうした知見をもとに,家庭科における食生活における自己管理力を育てるための学習内容と学習方法について具体的に検討することができた。
|