研究課題/領域番号 |
16K04684
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
峯 明秀 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (10379323)
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研究分担者 |
唐木 清志 筑波大学, 人間系, 准教授 (40273156)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 社会形成 / 学習材 / 価値判断 / 意思決定 |
研究実績の概要 |
本研究は,児童・生徒の社会形成力を育成する学習材の開発・実践・検証による実証的研究を目的とする。従来,社会科では社会認識形成と公民的(市民的)資質育成の両面から目的が論じられ,どちらに重点をおくかによって,社会科が担う範囲や立場を限定してきた。しかし,社会の急激な変化に伴い伝統的なカリキュラム・内容編成の考え方を超えて,未来に生きる学習者が自立した責任ある市民として社会を形成し得ることを保障する学習を真に実現する必要がある。この問題意識のもと,小学校・中学校における価値判断・意思決定を中心に据えた学習材を開発し,学習過程を組織・実践し,確かな社会認識形成と教室を超えた社会形成力の育成を同時に図る。そこで,昨年,事前の準備として,学習者の市民参加スキルを促す教育を先進的に行っているアメリカ合衆国・オレゴン州ポートランドを再訪問した。Dream Schoolとして学校全体で社会貢献を行っている学校を参観し,社会参加活動に積極的に関与する学習やワークショップ,ボランティア活動を取り入れた学校の視察及び授業参観を行い,カリキュラムや実施方法についてボランティアスタッフ,ポートランド州立大学の関係者及び実践者にインタビューを行った。また,直接的な社会参加スキルを教授する学習ワークシートを入手し,翻訳・分析を行った。国内では,価値判断・意思決定を扱う授業実践を研究協力者に求め,会議を通して意見交換行った。次年度以降,引き続き,社会に積極的に関与する資質・能力をどのように評価するのか,その要素を検討し授業改善研究の方法論を組み込んだ社会形成力育成のための学習材を開発し,協力者・協力校において実施・評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究協力者の学校や学習者が置かれている状況に応じ,柔軟で継続的な学習を図る中で,児童・生徒の社会形成に必要な知識・技能,そして価値判断や意思決定力が育つのかという計画に対し,実施授業をもとに,実践経過を学習者の成果物や授業DVDをもとに報告する。具体的な事実をもとに評価分析を摺り合わせ,共有する。学習者にどのような学力や資質能力が身に付けられたかを検証することを条件とした。それには研究協力者間で,適宜,学校や研究会の授業検討会に参加し,意見交換を行う,公開授業を通して,本研究の成果と課題を検証する。社会形成に結びついた要素がどこにあるのか明示した上で,授業観察および授業後の検討会を行う。適宜,合同会議を開催するなどの場の設定が必要であるが,状況として時間的な都合がなかなかつかないため実施回数が不十分であった。次年度に向けて,意見交換のための通信手段を用いて,計画を見直し,授業の実態把握・実施・検討会の具体的実行性のある遂行改善を図る。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の成果と課題をもとに,児童・生徒の社会形成力を育成する学習材の開発・実践・検証による実証的研究を図る。とくに,学習材の問題点や授業展開を省察し,PDCAを継続的に行う。そのため,教員間の協働を軸とした研究会での発表を適宜進め,授業改善のマネジメントサイクルを確立する。児童・生徒の社会形成に必要な知識・技能,そして価値判断や意思決定力が育つという仮説のもとに,授業者がどのような社会事象を選択し,価値判断や意思決定場面をどのように設定し,学力・資質・能力,主体的な態度を育成するのかを明示する。次に,それはどのような評価指標によって見とれるのかを抽出する。研究協力者および研究協力校では,学習者の実態に応じて,学習材を開発し実施する。 ①7~8月 実施授業をもとに,実践経過を学習者の成果物や授業DVDをもとに報告する。具体的な事実をもとに評価分析を摺り合わせ,共有する。学習者にどのような学力や資質能力が身に付けられたかを検証する。事実をめぐる話し合いを通して,参加者自身の振り返りを促進する。 ②9~11月 公開授業を通して,本研究の成果と課題を検証する。社会形成に結びついた要素がどこにあるのか明示した上で,授業観察および授業後の検討会を行う。適宜,合同会議を開催する。 ③12~3月 学習者の実態把握と分析・指導技術 ・教材解釈 ・学習材の開発・授業展開の工夫 ・学び方の指導・情報の収集と活用など,また,学習規律の確立,学習する雰囲気の醸成など理論の精緻化を図る。授業者や学習者にどのような変化が現れたのかを聞き取り,学習者の知識・技能及び社会形成のための資質・能力がどのようになったのか,質問紙調査による分析を行う。1年間を振り返り,授業の実態把握・計画・実施状況を見直し,次年度の実践計画を立てる。本年度の成果報告としてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は,研究協力者間で,適宜,学校や研究会の授業検討会に参加し,具体的な事実をもとに意見交換及び評価分析を摺り合わせ,共有するための実施回数が不十分であった。会議日程の調整が難しかったため研究進行がやや遅れた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に遠隔通信手段による会議が可能になるよう機器の調整を行い,授業の実態把握・実施・検討会の具体的実行性のある遂行改善を図る。
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