研究課題/領域番号 |
16K04689
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
有田 洋子 島根大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (70598143)
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研究分担者 |
金子 一夫 茨城大学, 教育学部, 名誉教授 (70114014)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 美術教育学 / 美術教育史 / 学科目 / 大学院 / 教員養成 / 教科教育 / 師範学校 |
研究実績の概要 |
本研究は第二次世界大戦後の日本の美術教育学の制度的基盤の成立過程は、全国の教員養成大学・学部での美術科教育専門の人的整備過程であるとして調査を行い、次の成果を得た。北陸地方2大学(金沢大学、福井大学)と新構想3大学(上越教育大学、兵庫教育大学、鳴門教育大学)と美術教育研究者を輩出した1大学(筑波大学)に関して、美術教官の勤務期間や担当分野を調査した。その結果を基に各大学の美術教官勤務表を作成した。そして大学ごとの美術教育学の制度的基盤の成立過程と特徴を三段階の時期区分に沿って以下のように明らかにした。 北陸地方:1.師範学校から教員養成大学・学部へ美術教官はほぼ移行した。美術科教育専門教官はいなかった。金沢大学では一部の美術教官は移行せずに転出し、数年後に大学教官として戻り、後に学科目「美術科教育」に所属した。2.学科目「美術科教育」は、昭和47年に福井大学、そして昭和53年に全国で最後に金沢大学に設置された。3.大学院美術教育専攻は、平成2年に金沢大学、平成7年に福井大学にそれぞれ設置された。 新構想大学:新構想3大学は教科教育を中心に置く大学院大学として出発した。設立当初から美術教育学研究者が採用され、大学院美術教育専攻も設置された。すなわち美術教育学が制度的に成立した状態からのスタートであり、既存の教員養成大学・学部とは異なる様相をなした。 美術教育研究者を輩出した大学:平成年代に入ると、筑波大学大学院出身者は全国の教員養成大学・学部に美術科教育教官として多数採用された。大学院設置のための需要に応じる形であった。 以上の研究成果は、学会誌論文2、口頭発表4、その他5、著書1等で公表した。また本研究の一環として公表した論文は2019年度美術科教育学会第17回「美術教育学」賞を受けた(有田、2019「戦後日本の教員養成大学・学部における美術教育学の人的制度基盤の成立」)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず実施計画通り、北陸地方の2大学、新構想の3大学、美術教育研究者を輩出した1大学に関して、美術教官の勤務期間及び担当分野を調査できた。さらにその調査結果を基に各大学の美術教官勤務表を作成できた。同表から各大学の美術教育学の制度的基盤の成立過程と特徴を次のように明らかにでき、解明不十分な事項はあまりなかった。 北陸地方:1.師範学校から教員養成大学・学部へ美術教官はほぼ移行した。美術科教育専門教官はいなかった。金沢大学では一部の美術教官は移行せずに転出し、数年後に大学教官として戻り、後に学科目「美術科教育」に所属した。2.学科目「美術科教育」は、昭和47年に福井大学、そして昭和53年に全国で最後に金沢大学に設置された。3.大学院美術教育専攻は、平成2年に金沢大学、平成7年に福井大学にそれぞれ設置された。新構想大学:新構想3大学は教科教育を中心に置く大学院大学として出発した。設立当初から美術教育学研究者が採用され、大学院美術教育専攻も設置された。すなわち美術教育学が制度的に成立した状態からのスタートであり、既存の教員養成大学・学部とは異なる様相をなした。美術教育研究者を輩出した大学:平成年代に入ると、筑波大学大学院出身者は全国の教員養成大学・学部に美術科教育教官として多数採用された。大学院設置のための需要に応じる形であった。 以上を明らかにできたこと、そして研究成果を、学会誌論文(『美術教育学』第41号、2020年3月、有査読2本)、口頭発表(第58回大学美術教育学会岐阜大会、2019年9月、2本。明治美術学会、2019年12月、1本。上田市美術館「農民美術児童自由画運動と美術教育」展シンポジウム、2019年12月、1本)等で公表できたことからも、本研究課題の進捗状況を概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者と研究分担者で、美術教育学の成立と学会との関連について大学美術教科教育研究会創設期会員への聞き取り調査と、国立公文書館・国立国会図書館等で資料調査を行う。なお調査方法は当初計画では対面での聞き取り及び実地での実物閲覧であったが、本年度の状況に応じて、オンラインでの聞き取り及び写しの交付等に変更する。そして両者で資料や事実の解釈について協議する。この協議に関しても、本年度の状況に応じて、オンラインでの協議等に変更する。 研究代表者は大学ごとに美術教育学の制度的基盤の成立過程の特徴を分析して類型化する。さらに、各大学の事例を総合して全体像を作り、分析・考察して結論を得る。 研究成果をまとめ、学会での口頭発表、学会誌等への論文投稿、報告書作成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:今年度末(2019年3月)に学会での口頭発表とそれに伴う調査を計画していたが、学会中止及び調査出張中止となった。その学会参加費及び旅費分が未使用となったため、次年度使用額が生じた。 使用計画:次年度使用額は、オンラインによる調査・研究成果発表のための費用、国立公文書館や各種図書館等での写し・複写取り寄せのための費用に補填する。
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