最終年度の前年度末までに計画していた全ての調査を完了して最終結論を得たものの、COVID-19のため研究全体の成果の公開は次年度に延期となった。最終年度はその成果を論文及び学会発表等で公開できた。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果は次の通りである。本研究は第二次世界大戦後の日本の美術教育学の制度的基盤の成立過程は、全国の教員養成大学・学部での美術科教育専門の人的整備過程であるとして、全国網羅的調査を完了し、全国の教員養成大学・学部の人的整備過程の可視化を完成し、次の最終結論を得た。教員養成大学・学部における美術教育学の人的制度基盤は、戦後の大学での教員養成政策が教養教育重視から教職の専門性重視へ転換していく過程で次の三段階で成立した。第一段階では美術教育専門と美術専門は未分化であった。師範学校美術教官は新制大学に多数移行した。師範学校での図画専門と図画教授法専門の未分化も継承された。第二段階では学科目「美術科教育」設置により美術教育専門と美術専門が形式的に分化し、美術科教育の形式的専門性が制度的に出現した。最初は設置の少なかった学科目「美術科教育」は急速に設置されて昭和53年に全国設置が完了した。第三段階では大学院教育学研究科美術教育専攻設置と美術教育学専門家配置によって美術教育専門と美術専門が実質的に分化し、美術教育学の内容的専門性が制度的に保証され、人的制度基盤が成立した。研究業績審査が美術教育学の内容的専門性を保証した。美術教育学問化への異和等の困難はあったものの、昭和40年代の特定大学設置方針から昭和53年頃の全国設置への政策転換、平成2年からの急速な大学院設置によって、美術教育専攻も平成11年に全国設置が完了した。以上の研究成果は雑誌論文(51件、うち査読付論文14件、うち学会賞受賞論文1件)、学会発表(22件、うち招待講演5件)、図書(6件)等で公開できた。
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