研究課題/領域番号 |
16K04693
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松本 仁志 広島大学, 教育学研究科, 教授 (40274039)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 筆順 / 筆順資料 / 筆順史 / 筆順指導史 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、調査対象とする筆順関連資料を整え、筆順変遷の過程を資料化するための視点を整理することを主な課題とし、次のように研究を進めた。 1.未収集筆順資料の収集をする…明代・趙謙撰の『学範』に異本の存在が判明し、『四庫全書』本及び東洋文庫蔵本を収集した。清代・唐彪著の『父師善誘法』に異本の存在が判明し、同志社大学蔵本を収集した。また、『常用国字標準字体筆順手冊』以前の戦後台湾の筆順資料としては、親親編集部編集の『児童図画字典』(1982)を収集した。 2.戦後日本の筆順資料の整理をする…文部省の『筆順指導の手びき』(1958)所収筆順との比較のため、「当用漢字表」の漢字881字の筆順すべてを収録している資料(『書取りと筆順』(1950)、『ペン習字辞典』(1952)、『国語学習事典』(1952)、『教育漢字の筆順と精解』(1954)、『少年書道講座1-10』(1955-1956)、『標準当用漢字辞典』(1955)、『書道実習講座7・教育漢字三体字典』(1956)、『中学生の新かなづかい送りがな字典』(1957))に限定して、『筆順指導の手びき』との字種、字体、筆順の異同を整理した。その際、7名の資料整理要員を雇用して作業した。 3.資料化を図るための視点の整理を行う…いまだ検討過程であるが、字種、字体種、筆順種、筆順の表記方法、筆順根拠、筆順の機能性、文献に初出した年代などの要素を踏まえることは確定しているが、要素間の関連づけをどのようにすればよいか、また、それらをどのように視覚化するかという点までは、結論を得るに至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね当初計画の通りに進んでいるが、新たに収集した筆順資料のうち、『学範』及び『父師善誘法』の異本所収の字種・筆順の整理がいまだ終わっていない。また、資料化に向けた視点の整理も進めているが、確定するには至っていない。 このように、いくつかの課題を残し居るので、完全に計画通りに進んでいるとまでは言えない。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、平成28年度の筆順資料の整理および視点の確定を受けて、筆順資料の複数のモデルを策定する計画である。複数のモデルを作成しそれらの優劣、適否の検討を行うために、モデルはミニマムなものを想定している。 なお、平成28年度に引き続き、未整理の資料の整理を行うとともに、未収集資料についての調査をモデル作成と平行して継続し、新たに収集した筆順資料があった場合には、整理してデータ化に反映させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料収集が完了していないため、「その他」として計上した複写費50,000円の使用を行わなかったため。及び、物品費および旅費の使用において、若干の残額が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
資料収集のための旅費として使用するとともに、筆順変遷過程の資料化モデルを複数作成する過程における複写費として使用する。
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