平成30年度は、データの表示方法について、筆順表記の多様性や表示スペースの相違、字源系筆順の史料に多く見られる付記文の扱いなどの観点から検討した。その結果、HNG(漢字字体規範データベース)では、漢字単体の入力で観点毎の羅列的表示が可能であるが、筆順の場合は字種毎に表示面積の差が大きいため、コンパクトなスペースでの表示は困難であること、すべてを数字記入表記や点画累加式表記で統一して入力することは、意味部分結合式表記に意味を持たせている字源系筆順や表示字形に意味を持たせている運筆系筆順の読み取りができないことなどから、一元的に表示することは困難という結論を得て、字種単位と文献単位の二つを基本的な分類観点とし、筆順史研究で明らかとなっている分類観点を追加設定できるように原文そのままを画像として取り込むこと(縮尺は操作)を想定してモデルを作成した。 研究期間全体の目標は、モデルを作成しながら資料化のための視点や筆順関連要素の組み合わせについて検討することであったが、検討の結果、字源系筆順から機能的合理性を根拠とする筆順へのシフトがわかるような分類、機能的合理性の中で教育系筆順が台頭する流れなどがわかるような分類、各筆順史料において支配的な筆順根拠を分析しやすい分類が可能であること、筆順根拠による分類と字種別分類とを組み合わせることで、筆順史料間の関係性が読み取りやすくなることなどが明らかになった。他の成果としては、未収の集筆順資料として、明代・趙謙撰の『学範』の異本『四庫全書』本及び東洋文庫蔵本、清代・唐彪著の『父師善誘法』の異本である同志社大学蔵本を収集したこと、また、資料化の下準備として「当用漢字表」の881 字の筆順すべてを収録している資料に限定して『筆順指導の手びき』との字種、字体、筆順の異同を整理し、検索に備えて文字番号を付与する作業を行なったことがあげられる。
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