研究課題/領域番号 |
16K04695
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
坂井 武司 京都女子大学, 発達教育学部, 准教授 (30609342)
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研究分担者 |
廣瀬 隆司 四天王寺大学, 教育学部, 教授 (50452660)
長谷川 勝久 東洋大学, 文学部, 教授 (80321280)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 授業実践力 / 授業観察力 / 数学的洞観力 / クリッカー |
研究実績の概要 |
教師の算数科授業実践力を向上させる場面として、授業実践と授業観察の2つの場面がある。授業観察に関して、どのような視点から授業を評価しているかという53項目からなる調査を、166名の教師を対象に実施した。因子分析をした結果、授業過程に関する因子(6項目)・授業の手立てに関する因子(4項目)・リフレクションに関する因子(4項目)の3因子14項目からなる「授業観察力の自己評価のための指針」を開発した。また、授業実践に関して、すでに開発している「授業実践力の自己評価のための指針」の各項目と対応する授業実践改善のための具体的な方法を示した下位項目の設定を行なった。 授業研究会等における授業観察を通して、教師の算数科授業実践力を向上させるためには、「数学に対する知識観や算数科・数学科の学習観・授業観に基づき、算数科・数学科の指導内容や方法の本質を見抜く数学に関する洞観力」と定義した数学的洞観力の育成が不可欠である。数学的洞観力を育成するための授業研究として、大学4回生を対象に、クリッカーを用いた授業観察と反応結果を基にした事後検討会からなる授業研究を3回実施した。3回の事後検討会におけるプロトコルの分析から、学生の授業観察における洞観する視点の幅と内容の深さに変化があることを見出し、数学的洞観力の段階として、一般的な指導方法に着目する段階、児童の認識を考慮する段階、算数科・数学科の指導内容の本質や算数の本質的な学び方を考慮する段階の3つがあることを明らかにした。さらに、数学的洞観力と授業観察に関する2つのアンケートの記述から、クリッカーを用いた授業研究は、数学的洞観力の育成に対して効果的であることを明らかにした。 これらの成果は、教師の算数科授業実践力を向上させる方法と評価のための指針として意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は以下の3点を達成することである。(1)数学的洞観力に基づいた算数科の授業実践力及び授業観察力に関する自己評価のための指標の開発及び数学的洞観力に働きかける研修システム開発を行う。(2)算数科の授業実践力及び授業観察力に関する指標と研修システムを用いた校内研修を実施し、教師の算数授業実践力の向上に対する研修システムの有効性を検証する。(3)教師の算数授業実践力の向上と児童の学力の向上及び教師の数学に対する信念・価値・素質・感情・態度の向上との関係を明らかにする。現在、平成28年度の計画通り、(1)まで達成しており、(2)についても、学部4回生を対象に模擬校内研修を実施し、数学的洞観力の育成に対する効果を検証している。したがって、計画通り、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、次の3点を計画している。(1)研修の内容と研修の方法の2つの側面から,数学的洞観力に働きかける研修システムを開発する。(2)1つの研究協力校の教師を対象とし,算数授業研究会を含む6ヶ月間の自主研修会を実施する。(3)算数科の授業実践力及び授業観察力に関する指標の得点の量的変化及び研修における教師の発言の質的変化の観点から分析を行い,教師の算数科の授業実践力及び授業観察力の向上に対する研修システムの有効性を検証する。3ヶ月間の自主研修会が終わった段階で(3)の有効性が検証されな買った場合、その原因を究明し、(1)の研修システムの修正を行い、6ヶ月間の自主研修会を延長して研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者において情報機器(クリッカー等)を購入する必要が生じたが、本年度の分担金では不足しており,次年度の分担金と合わせた使用額の範囲での購入を計画しているため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究代表者はクリッカーを所有しているので、次年度、研究分担者においてクリッカーを購入し、研究代表者と研究分担者のそれぞれのフィールドでのクリッカーを用いた授業研究の実施を計画している。
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