研究課題/領域番号 |
16K04701
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
鈴木 慶子 長崎大学, 教育学部, 教授 (40264189)
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研究分担者 |
土山 和久 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00273821)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 書字 / 綴り字 / 正書 / 大量な練習 / 作文への接続 |
研究実績の概要 |
初年次において主に以下3点[(1)~(3)]を実施した。(1)現地調査(6月):①入門期の文字獲得指導に関して、Heidelberg教育大学Funke教授と研究協議、②基礎学校低学年国語科授業の参観(Internationale Gesamtschule Heidelberg、Anton Bruckner schule)、及び授業者への取材、③Ludwigsburg教育大学Barkow教授、Hiller准教授、及びJeuk准教授と、入門期の文字獲得指導に関する研究協議。(2)独語入門期文字教材の日本語訳と教材編成の観察(7~1月):Internationale Gesamtschule Heidelbergの授業参観時に、1年生が使用していたEinsterns Schwester全6巻を購入し、教材分析を行った。(3)長崎大学教育学部附属小学校1年生の国語科授業の観察(6月~1月):日本語文字言語獲得の入門期を改めて検討した。 以上から主に以下3点[(1)~(3)]を得た。(1)書字教育に関して欧州一保守的な独国においても、基礎学校教育連盟から筆記体の教育を廃止してほしいとの要望があがっている。その理由の一つは児童の実態に合っていないからである。書字は正書法と連動しているので、この要望に関して現在当局が熟考している。その後、法的措置が決定するだろうとの情報を得た。また、実際の授業を観察すると、基礎学校の低学年は実に大量に書字する。その理由の一つは、独語の特性(発音と綴りとが一致せず、正書の習得が非常に困難)による。(2)分析を行った教材は、いわば日本の漢字・仮名ドリルにあたる。実に多種多様な展開があり、作文等の言語活動へ接続している。(3)長崎大学附属小学校は典型的な国語科授業を行っている。改めて観察した結果、独に比較して個人学習及び定着活動が圧倒的少であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
考え得る理由は、下記の通り。①研究分担者の人脈のおかげで、ドイツでの現地調査が6月に実施できたこと。②教材の翻訳に関しては、修士論文でドイツの書字教育をテーマにしていたRAが雇用できたこと。③RAの人脈で、ライプニッヒ大学日本文化日本語専攻卒業のドイツ人に協力を得ることができたこと。④附属小学校の協力で、ターゲット児童の追跡を進めることができたこと。 ①④に関しては、研究計画時点から想定していたことであったが、想定以上に実に細やかに対応してもらえた。②③に関しては、研究計画時点では全く想定していなかったことである。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、11月頃に現地調査を実施したい。それに備えて、独語の書写ノートの分析を実施する。次に、28年度に行った独語の綴字教科書と、独語の書写ノートとの機能分担を分析する。それをふまえて、現地の教師に、指導を実際に関して取材する。そのことによって、独語における書字指導、綴り字指導、及び正書指導の関連を整理していきたい。 第2に、2年生になったターゲット児童に関しては、引き続き追跡を行いたい。そのことによって、日本語文字言語のつまづきを具体的に把握して行きたい。 上記の2点から、日本語の「書くこと」教育の改善に関して、具体的な糸口を見出していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が当初予定していたプリンターのトナーカートリッジ購入を別経費で行ったことによって、23,564円が残った。 研究分担者が9月に参加したドイツ語教授学シンポジウム(Symposion Deutschdidaktik)のルードヴィヒスブルク大会のための旅費を35万円打ち切りとして支出を抑えたため、10566円が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
研究代表者は、29年度に、消耗品を購入することとする。 研究分担者は、29年度の現地調査の旅費に充当することとする。
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