研究課題/領域番号 |
16K04708
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
北澤 俊之 東洋大学, 文学部, 准教授 (70553741)
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研究分担者 |
三澤 一実 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (10348196)
榎本 淳子 東洋大学, 文学部, 教授 (50408952)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 面白がるまなざし / 新鮮な視点 / 造形教育プログラム / ユーモア |
研究実績の概要 |
身近な環境を再度新鮮な目でとらえ直すための「造形教育プログラム」の開発に向け、継続的に研究を進めてきた。それは子どもたちのうちに、世界はいつも新しい側面を開いてくれるだろうという予期や、その予期を携えながら世界と積極的に関わろうとする、いわば「面白がる身体やまなざし」を育む試みでもある。テーマにある「とらえ直す」とは、都市化や情報化等により子どもたちの身体や考え方にかけられてしまったフィルターやバイアスに揺さぶりをかけ、まるではじめて出会うかのように世界を受けとめ直すことをさす。身近な世界を感じ、受けとめるためのみずみずしい感性や身体を育むことは、子どもたちにさまざまなイメージを味わったり読み解いたりする力や、表現へと花開く想像力を宿すことにつながる。このことは先日告示された新しい指導要領が目指す造形教育のあり方に対する、ひとつの回答になり得るものと確信している。 研究実績としては、年度当初には大学生を対象とした予備的な調査を行った。開発したいくつかのプログラム試案を大学生に対して実施したところ、「いままでとは異なる視点から対象を見ようとする意識」が顕著に高まることが認められた。この結果をふまえ、年度後半には、本来の対象として想定する小学生に向けてショートプログラムを実施した。埼玉県の公立小学校4校に調査を依頼し、データを分析したところ、5年生において大学生同様の結果を得ることができた。一学年のみ、ということで課題は少なからずあるものの、小学生を対象とした本プログラムの可能性を確認することができたことは一つの成果ととらえてよいだろう。 これらの成果については、「第50回日本美術教育研究会」での口頭発表、および『日本美術教育研究論集』第50号ならびに『武蔵野美術大学大学院博士後期課程研究紀要』第10号に投稿し、掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
年度当初の計画では、①プログラムの理論的な枠組の構築、および②プログラムの枠組にそった具体的な活動開発をあげていたが、いずれの目標もおおむね達成することができた。 ①については、これまでのプログラムの3つの柱(「身体」「ユーモア」「造形的思考」)を、美学の知見を援用し「探索」「想像」「分析」と再編・整理した。その結果、より実際の認知経験に即したフレームを用意することができた。 ②については、先行研究をふまえ、先述の各柱に即した特徴的な活動をいくつか開発した。加えて、それらのうちのいくつかを、短時間で実施できるショートプログラムとして編み直すことを試みた。このことにより、活動のねらいを保障しつつも、より手軽に教育現場で実施することが可能となった。 さらに次年度に計画していた、大学生・小学生を対象とした予備的な調査も前倒しで実施することができた。小学生を対象とした予備調査の結果は十分とはいえないものだったが、次への課題が早い段階で明らかになったことは大きな収穫であった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は当初の計画どおり、プログラムを構成する各カテゴリーに即した活動を開発し、プログラムそのものを充実させたい。また、あわせて本年度の小学生を対象とした調査の課題をふまえ、活動の内容のみならず、実際の指導や展開方法、質問紙の項目やデータ解析の方法などについてもさらに検討を加えたい。 その後、研究者が所属する研究会などを通じて、少なくとも小中学校をあわせて10校ほどの学校に調査協力を依頼する。具体的には、プログラムのリストから実践可能な活動を選択し、夏休み前までに実施してもらうように依頼する。研究者は可能な限り参与観察を行い、活動の評価を行う。また、活動の前後にそれぞれアンケート調査を行い、活動を通して子どもたちの「ものの見方」がどう変化したのか、その変容を分析し、随時プログラムにフィードバックしていくよう努めたい。
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