研究課題/領域番号 |
16K04710
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
渡辺 哲男 立教大学, 文学部, 准教授 (40440086)
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研究分担者 |
山名 淳 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (80240050)
勢力 尚雅 日本大学, 理工学部, 教授 (80459859)
柴山 英樹 日本大学, 理工学部, 准教授 (60439007)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 中動態 / 詩的な言葉 / 記憶 / 会話 / 偶然性 |
研究実績の概要 |
平成29年度も、平成28年度に続き、要所で本科研主催による講演会を重ねて、他領域の研究者との研究交流が行われ、彼らからの刺激を受けながら研究を発展させることができた。また、平成30年度末に本研究の成果を書籍として刊行することも決定した。 平成28年度は、本研究の進展のためには「中動態」概念を咀嚼することが重要だと認識した。平成29年度は『芸術の中動態』の著者である森田亜紀氏を講師にお招きすることができ、また、その後森田氏が同書で引用した京都学派の三木清の言語哲学を学ぶべく、この領域に知悉した田中久文氏をお招きすることができた。このお二人には、先の研究書の執筆にも参加頂けることとなり、平成30年度はさらなる研究交流が期待される。また、平成29年度末には「弱いロボット」で知られる岡田美智男氏をお招きし、不完結性、不完全性を抱えたコミュニケーションの意義を講じていただいた。本科研では、「言語活動」を検討する上で、「詩的な言葉」あるいは「詩人的な言葉」が重要なキーワードとなっているが、岡田氏の論じるコミュニケーション観は、本科研メンバーの言語観と重なり合うところがあり、研究の進展に大きな刺激を受けることとなった。 こうした研究交流を踏まえながら、平成29年度は、「偶然性」や「記憶」などといった新しい研究上のキーワードを得ることができた。お互いの考えを深めあう「対話」が重視されているが、そうではなく、「偶然」に生み出される、不完全性の高い(一見、「考えを深め合う」ようにはみえない)「詩的な会話」の意義、「ヒロシマ」の記憶を語り、聴く実践から見出される問題、あるいは、「教科化」されることで注目される「道徳」の授業で、問いを持ち続ける授業をどのように展開するか、といった、言語による表現によって思考を深めるということの意義を幅広いテーマから探究した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
言語を含むあらゆる表現活動の考察に大きく関わる「中動態」概念を、平成28年度以上に掘り下げることができ、また、研究メンバーが、本研究を進展させる業績を発表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に刊行することが決定した、本研究の成果を収録した研究書の刊行に向けて、研究メンバーがそれぞれ研究の総仕上げをすることになる。大きくまとめれば、「言語活動」と「アート」を接続する研究を行うことになると思われるが、同時に、本科研に残された課題である、学校現場の授業づくりへの寄与が行えるように、学校現場における「言語活動」を、多様な角度から考察する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が進展し、さらなる他領域との交感が必要であることが認識され、予定よりも多くの研究者を研究会や講演会の講師として迎えるためには、当初の予定より多くの謝金や交通費を来年度に残す必要があり、この金額が生じている。この次年度使用額は、主にこうした講師謝金として使用する予定である。また、平成30年度分として請求した助成金は、上記とは別に招く予定の講師の謝金、学会参加のための旅費、図書費等のために使用する予定である。
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