研究課題/領域番号 |
16K04711
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
山中 正樹 創価大学, 文学部, 教授 (20280000)
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研究分担者 |
難波 博孝 広島大学, 教育学研究科, 教授 (30244536)
田中 実 都留文科大学, 文学部, 名誉教授 (40137055)
中村 龍一 松蔭大学, 公私立大学の部局等, 教授 (10750268)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 国語科教育 / 文学教育 / 学習指導要領 / 「文学国語」 / 近代文学研究 / 近代小説 / 第三項理論 / 世界観認識=世界存在の認識 |
研究実績の概要 |
本研究は、小中高12年間を見通した国語科文学教育において、獲得するべき技能とコンピタンシーは何かを究明するものである。小中高の文学教材を使った授業において、21世紀を生き抜く学習者がどのような技能とコンピタンシー(あわせて教育内容)を身に付ければいいか、それを理論的・実証的に策定することを目的とするものである。 そのために、国内外の〈文学教育研究〉および〈近代文学研究〉の達成水準を明らかにした上で、求められる達成水準に基づく小中高12年間の文学教育の教育内容のモデルを策定することを目指しスタートした。 研究第1年目の本年度は、上記目的の遂行のために、高等学校国語科における文学教材を中心に研究を行った。具体的には、高等学校国語科の現代文分野において、各教科書に収録されている主要な小説教材である「羅生門」(芥川龍之介)・「山月記」(中島敦)・「鏡」(村上春樹)・「神様」「神様2011」(川上弘美)・「舞姫」(森鴎外)・「こころ」(夏目漱石)を採り上げて、研究を進めた。この間、2016年12月に中央教育審議会が答申で、高等学校国語科に「文学国語」なる科目を設置することを求めた。そこで本研究でも、想定される新教科「文学国語」の教育内容を射程に入れ、「文学教材」の持つ「資質・能力」について検討し、「文学」が持つ「力」が読者にもたらす効能等を考え、教育内容を策定するための研究を行った。 そのために、上記作品群が〈近代文学研究〉においてどのように読まれてきたのか。またそこにどのような問題が在ったのかを検討した上で、田中実が提唱する〈第三項理論〉の立場から、新たな作品の〈読み〉を検討した。さらにそれを基に、〈文学教育研究〉の立場から、「文学」ならではの「力」と「文学教材」ならではの「資質・能力」を養うための〈教材価値〉に関する研究を行い、それを元に、〈授業構想(プラン)〉の策定を目指した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究第1年目の本年度は、高等学校国語科における文学教材を中心に研究を行った。具体的には、高等学校国語科の現代文分野において、各教科書に収録されている主要な小説教材である「羅生門」(芥川龍之介)・「山月記」(中島敦)・「鏡」(村上春樹)・「神様」「神様2011」(川上弘美)・「舞姫」(森鴎外)・「こころ」(夏目漱石)を採り上げ、研究を進めた。 本研究の目指す、「21世紀を生き抜く学習者がどのような技能とコンピタンシー(あわせて教育内容)を身に付ければいいか」という目的の達成のためには、教科教育の在り様を検討しなければならない。その教科教育を考えるためには、教科教育の「教科内容」を考えなければならない。そのために、その「教科内容」を支える専門領域の成果を踏まえなければならないということは大原則であろう。 その前提の基に、まずは上記作品群が、〈近代文学研究〉においてどのように読まれてきたのか。またそこにどのような問題が在ったのかを検討した上で、田中実が提唱する〈第三項理論〉の立場から、新たな作品の〈読み〉を検討した。さらにそれを基に、〈文学教育研究〉の立場から、「文学」ならではの「力」と「文学教材」ならではの「資質・能力」を養うための〈教材価値〉に関する研究を行い、それを元に、〈授業構想(プラン)〉の策定を目指した。 現段階で、この研究成果は概ねまとまりつつあり、2017年秋に、上記作品群についての〈作品研究〉と、その成果を基にした〈教材価値研究〉、およびこれらを踏まえ、教室で授業を行う際に、現場の国語科教員の方々の参考に資するための、具体的な〈授業構想(プラン)〉を、本研究の成果としてまとめた。その成果は、2017年度秋に書籍として出版する予定であり、既に発行元も決定している。 このように、現在の本研究課題は、「おおむね順調に進展している」と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの、高等学校国語科における文学教材、特に〈近代小説〉を中心に研究した成果を基に、今後は、中学校国語・小学校国語における文学教材、なかでも引き続き小説教材の検討に取り組んでいく予定である。 研究第2年目の2017年度は、公刊した高等学校国語科における文学教材の研究に関する成果を、現場の高等学校の国語科教員の方々に実践してもらい、批判・検討を行ってもらう。それを研究集会などの場を設けて、集約・議論し、今後の研究課題をさらに精査するとともに、その成果に盛り込む内容を吟味し、より有用度の高い研究成果の提供を目指していく。 特に現状の〈近代文学研究〉では、今世紀初頭に荒れ狂った〈カルチュラル・スタディーズ〉の「嵐」によって、〈文学〉そのものが否定され、(文学教育)の不毛が叫ばれた。そのような状況の中で、国語教育学の研究者・実践者からは、「現段階において、近代文学研究の成果は溢れているのだろうが、そこには、「文学教材」ならではの「資質・能力」につながる「文学教材」固有の「力」を構築していくための材料になるものが見あたらない」との批判を受けている。 そこで、本研究成果を公刊し広く世に問うことで、ポストモダン以降、「〈読み〉の原理論」を見失ったと言える〈近代文学研究〉そのものの姿勢を問い直し、「文学」ならではの「力」を見直す方向性を打ち出していく。その議論の中から、「文学教材」ならではの「資質・能力」および「文学教材」の持つ独自・固有の「力」について、現場の国語教師の方々も含めて、広く議論を展開しながら、国語教育学の分野において、新たなる教材論の発展へと結び付けて行きたい。 今後は、このように近代文学研究者や国語教育学者、さらに国語科教員との連携・協働および議論を通して、今後の「国語教育」および、その「教育内容」の在り様をめぐる議論を進めていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用分が生じたため、次年度へ繰り越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究分担者の中村龍一の使用分で、98,370円を使用。残額は、2017年度「その他」使用分に組み入れるものとする。
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